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集英社×スタートアップ。 新しいマンガビジネスに挑む“マンガテック奮闘記” ~後編~

前回までのあらすじ!

「マンガ業界の巨頭、集英社さんといつか一緒に仕事がしたい……。」

そう思っていた主人公・大藤の念願が叶い、集英社と共にアクセラレータープログラムを開催することに。その名も「マンガテック2020」、新しいマンガビジネスの開拓を目指すプログラムだ。

マンガ市場に新風を巻き起こすかもしれないマンガテックだが、実は大藤、これまでアクセラレータープログラムを企画したことも運営したこともなく……待っていたのはゼロイチの大奮闘

前編では主人公・大藤と、縁の下の力持ちこと熊坂の奮闘を追ったが、ここからはWEB担当の河野もログイン。
WEB構築から参加者たちのメンタリングまでを追った大奮闘の後編、スタート!

~マンガテック2020とは?~

2020年の夏に始動した、集英社×スタートアップのアクセラレータープログラム。従来のマンガビジネスにとらわれない斬新な事業アイデアを持つスタートアップと共に、集英社と新しいビジネスの共創を目指すプログラム、それがマンガテック2020だ!※詳細はバナーをクリック。

~登場人物紹介~

大藤 充彦さん(Director/Planning Team)
マンガテック誕生のキッカケをもたらしたこの奮闘記の主人公。当時アクセラレータープログラム初挑戦だったゆえ0→1の奮闘にもがく。

得意:頭のなかでどんどん思考を広げていくアイデア発想マン。
苦手:本をゆっくり読むこと(せっかちなので)。
推しマンガ:熱さが好きという理由でイチオシは「海猿」。最近の推しは「タコピーの原罪」「SPY&FAMILY」「推しの子」など。

熊坂 美弥子さん(Project manager)
マンガテックの運営がスムーズにいくよう細やかなフォローでサポートした縁の下の力持ち!

得意:マルチタスクが得意で同時進行が苦じゃないタイプ。
苦手:デザイン系のクリエイティブが苦手ゆえパワーポイントに苦戦しがち。
推しマンガ:お兄さんが少年ジャンプを読んでいたことから「SLAM DUNK」にハマる。
熊坂「SLAM DUNKは電子書籍化されていないのでしてほしい!」

NEW!!

河野 義成さん(Web Team)
マンガテックのホームページをディレクション。急ピッチのなか進んでいくWEBへの落とし込み作業にディレクターならではの奮闘が……!

得意:マンガをたくさん読むこと。紙媒体で読むのが好き。
苦手:先の予定を立てるのが苦手。旅行の計画も行き当たりバッタリ。
推しマンガ:少年ジャンプ+のなかでイチオシは「ハイパーインフレーション」。

第5章 情熱と情熱のぶつかり合い

大藤の奮闘により企画案が通り、実施計画まで落とし込めたマンガテック。
次にとりかかるのは、このアクセラレータープログラムを世間に周知するための、マンガテックのホームページ作成だった。

これをディレクションしたのはWEBチーム河野。当時の意気込みを、彼はこう振り返った。

河野「集英社さんの熱意を取りこぼさないようなデザインにするのが使命だった。」

熱量が高い少年ジャンプ+編集部。その情熱に匹敵するクオリティのものを出していく。ディレクター河野のプレッシャーは、そこにあった。

河野「僕の役割は、集英社さんからきた仕様をデザイナーやコーダー(WEBサイトなどのプログラムのソースコードを記述する人)に伝えること。また、スケジュール調整や人員のアサインも仕事になります。

いま思い返しても、決して余裕のあるスケジュールではなかった……。だからこそ、急ピッチでも妥協せずにやり抜く熱量が必要でした。

……マンガテックには、どんな応募者がくるんだろう?
集英社×マンガビジネス×スタートアップという、これまでにないアクセラレータープログラムゆえお手本がなく、手探りのなかデザインをイメージしていく。

河野「マンガテックは、マンガ好きのイベントではなく、テック系のスタートアップに向けたアクセラレータープログラムです。興味を持ってくれたスタートアップが、“僕らのことじゃない”と思われないようにデザインしなくちゃいけないので、マンガ×テックの良い塩梅を見つけるのに苦労しました。」

集英社のクオリティ意識は高く、細やかな修正が何度も入る。河野はそれら修正の意図を読み取り、デザイナーに伝える。ときには集英社に足を運び、動きやエフェクトといった演出の魅力をプレゼンしたり、ときにはデザイナーの意図と集英社からの修正依頼の妥協点を探ってみたり。

集英社の並々ならぬ熱意と、スタートアップのプロというツクリエの意地。両者の情熱がぶつかり合い完成したのが、マンガテック2020のホームページだ!

↑河野の奮闘ポイント①
「冒頭のデザインは、ワクワク感やエッジの効いた印象を与えつつも、可読性を損なわないように注意しました。」
↑河野の奮闘ポイント②
「“マンガ×テクノロジー”とは何なのか? あえて自分たちのイメージを持たないよう意識しました。」

第6章 嬉しい悲鳴……

アクセラレータープログラムが成功するか否かは、どれだけ見込みのあるスタートアップを集められるかにかかっている。そういっても決して過言ではないだろう。

目指せ、応募数100件!
そんな意気込みのなか、いざホームページを公開すると、どんどん増えていく応募数。

その総数なんと334件! 大健闘の大勝利!

幸先いい結果に祝杯ムードとなるが……その喜びは瞬く間に嬉しい悲鳴へと変わるのだった。

熊坂「応募数334件。当初の目標数が100件だったので、これは本当に嬉しい結果でした。ただし、当然待ち受けているのは334件の審査です。
集英社さんと共に審査していき約10チームを選抜。ここから約10チームとの選考面談に入るのですが、この日程調整がとにかく大変でした。」

そう振り返る熊坂の役目は、約10チーム×集英社の日程調整。そのやり方はこうだ。

各チームの代表にメールで面談日を打診。第三希望日まで挙げてもらう。

集英社側に投げ、返信をもらう。

各チームに決定した面談日を伝える。

熊坂のメールボックスには、約10チームの3つの希望日と集英社の予定が飛び交う。返信漏れがないか注意しながらスケジュールを組み立てていき、同時に応募者からの問い合わせや意見などにも対応していた。

熊坂「応募者からの問い合わせは自分のジャッジで答えられないものもあり、悩んだときは大藤さんに相談していました。また内容によっては集英社さんに確認する必要があり、この時期はメールチェックに追われていました。」

しかし熊坂の日程調整は、約10チームの選考面談だけでは終わらなかった。

選考面談によりさらに約10チームから5チームに絞られ、いよいよメンタリングのキックオフとなる。メンタリングの日程調整も熊坂が担当することになるが、今度は各5チーム×メインメンター×サブメンター×集英社と4社間の調整

熊坂の日程調整の奮闘は、まだまだ続くのであった。

最終章 マンガビジネスの新しい風

さて、ときは流れて2020年11月上旬……。

日本にもコロナウイルス感染者数が増えていくなか、いよいよ選考を勝ち抜いた5チームのメンタリングが始まる。この当時の奮闘を、大藤はこう振り返る。

大藤「2020年の下半期頃は、コロナウイルス感染症に対する行動制限がまだ明確じゃなく、どんな対策をもって進めていけばいいのか悩んでいました。」

くわえて大藤は、メンタリングの経験は豊富でもアクセラレータープログラムのメンタリングは初めて。不安を抱えるままスタートを切ったが……。

大藤「始まってしまえば不安はどこへやら。メンタリングはワクワクがとまりませんでした。」

メンタリングは、大藤が目コピを駆使して作成した“メンタリングシート”を使い、現状やゴールを設定して進めていったのだとか。
また、メンタリングで課せられた宿題も期待値を上回るものばかりで、グイグイ進んでいったそう。

大藤「みなさん前向きで、嬉しそうな顔をしていて。その雰囲気は本当に最高で。参加者やメンターさんたちから『こんなに細やかにサポートしてもらえるアクセラレータープログラムはないと思います』と言われたときは、内心ガッツポーズでした。」

約5ヶ月間のアクセラレーター期間を経て誕生した、斬新なマンガビジネス。
苦労し、もがいたぶん、その努力が実りとなったことが、成果報告会のリポート「MANGA TECH 2020 REPORT」から見て取れる。

“スタートアップ5社すべて、今後も集英社と協業していく”
そんな嬉しいカタチで幕を閉じたマンガテック2020だが、スタートアップ5社の挑戦はいまなお続き、2022年7月末には参加したスタートアップのこんな嬉しいニュースが飛び込んできた。

“マンガAI翻訳のMantra、集英社・東大IPC・DEEPCORE等から約1.5億円の資金調達を実施”

さらに1ヶ月後、またも嬉しいニュースが!

“五感をととのえて、マンガに没入しきるプライベートサウナ付ホテル「MANGA ART ROOM, JIMBOCHO」が2022年9月1日(木) オープン。第1弾作品コラボは『ダンダダン』!”

ゼロイチの奮闘にもまれながら突き進んでいったマンガテックというチャレンジ。

主人公・大藤は、「ありがとうと言われる機会がとても多かった」としみじみ振り返る……が!!

現在は集英社との「ジャンプアプリ開発コンテスト2022」プロジェクトに奮闘中!


マンガ創出につながる新しいアプリ・WEBサービス開発企画を、少年ジャンプ+編集部が大募集。
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応募期間は6/8~ 9/16と締め切り間近!?
集英社と共に新しいマンガビジネスを築きたいスタートアップはぜひ!

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