福祉とITのコラボ事業が好評!コワーキングで出会った起業家同士のマッチング成功ストーリー(前編)
ツクリエが運営するレンタルオフィス&コワーキングスペース「Ogyaa’s(オギャーズ)梅田 」でマッチングが成功した、若き起業家の宇野翔太さんと平井宏明さんにインタビュー!
どのような経緯から共同プロジェクトを企画運営するようになったのか? 個性の違う起業家同士のコラボによって、見えてきた成果や課題は? さらに“コワーキングスペースを最大限に活用するコツ”や“持続可能なビジネス展開のためのポイント”までお聞きしました。
☞お二人を引き合わせたコミュニティマネージャー中山幸恵さんの記事はコチラ!
BLANCPORT(ブランポート)合同会社 代表
1990年生まれ。高校卒業後、地元の美容室に就職。その後、ベンチャーの人材会社に転職。人と企業をつなげるコーディネーター業務を担当するうち、障がいをもつ人たちが就労意欲はありながらも、なかなか企業とマッチングできない現実に直面。
同社の新規事業の管理者として障がい福祉サービスの「就労移行支援事業所」を神戸市にオープン。支援活動を続けるなかで福祉業界の課題が見えてきたことから、新しい障がい者の労働環境づくりに挑戦しようと独立を決意。フリーランスとして多くの就労支援事業所の運営サポートを手がけ、2020年9月にBLANCPORT合同会社を設立。
株式会社滋案(しあん) 代表取締役
1995年生まれ。学生時代からオンライン学習塾を運営し、自らWEBサイト制作も行うなかでデザインやシステム開発に強い関心をもつように。
2019年よりWEB関連業務の受託開発およびマーケティングチーム「Point One」を立ち上げて起業。WEBサイト、写真・動画、名刺、チラシなど各種マーケティングアイテム制作をはじめ、企業の新規事業などのプロジェクトデザインまで幅広くサービスを展開。
2020年11月より障がい福祉事業を手がけるBLANCPORT合同会社が運営する障がい者へのIT教育サービス「ノビシロテック」事業に参画。2021年10月、起業時のチーム名称を「株式会社滋案」に改め法人化し、BLANCPORT合同会社のグループ会社として事業拡大を進めている。
出会いのキッカケはコミュニティマネージャーの紹介
オギャーズ梅田のコワーキングスペースを利用されている宇野翔太さんと平井宏明さんが出会ったのは、2020年6月。
コロナ禍に臆せず会社設立に向けて準備を進めていた宇野さんが、会社のロゴと名刺のデザインを依頼できる人材について、施設で会員らの交流を支援するコミュニティマネージャーの中山幸恵さんに相談したのがキッカケでした。
宇野さん「中山さんはグラフィックデザインができる2名の会員さんを紹介してくださって。そのうちの一人が平井くんでした。彼にお願いしようと決めたのは、なにより仕事への一生懸命さが伝わってきたから。
その頑張りを応援したかったんです。20代と若く、社会人としては不器用なところもあるけれど、周囲の人が応援したくなるような人柄的な魅力が彼にはあるように感じました。」
30代の宇野さんはベンチャーの人材会社勤務を経て、2019年にフリーランスとして独立。
前職で会社の新事業として障がい福祉サービスである「就労移行支援事業所」を立ち上げた経験から、独立後も障がい者雇用コンサルティングや福祉分野に参入した企業による就労支援事業所の運営をサポートしてきたといいます。
宇野さん「いまだ障がい者の雇用が伸び悩んでいるという社会的背景もあって、現在は雇用コンサル業より就労支援の場づくりの仕事がメインになっています。
フリーランスで活動した半年ほどの間にも、複数の企業さまからのご依頼で『就労移行支援』『就労継続支援A型・B型』といった障がい者の就労支援事業所の立ち上げや運営のサポートをするように。
事業規模が広がってきたこともあり、オフィススペースの必要性を感じてオギャーズ梅田さんを利用することにしたんです。」
こう語る宇野さんは、その後まもなくWEBデザインやシステム構築を得意とする平井さんとマッチングして、周囲の予想を超えた共同事業が生まれることに!
ロゴ&名刺づくりを通して起業への思いに共感
平井さんは2019年にWEB関連業務の受託開発チーム「Point One」を立ち上げて起業し、2021年10月に名称を「株式会社滋案」に改め法人化。
企業のプロモーションやマーケティングに欠かせないWEBサイトや写真・動画、名刺、チラシ制作などをワンストップで受託できる体制を整えてきたのだとか。
平井さん「起業する以前にも、コーチングとIT化に力を入れたオンラインの塾事業を展開していました。
僕には学生時代にひきこもっていた時期があって、当時『兄のような存在の人(コーチ)から、勉強だけでなく生活習慣の改善に向けた指導もリモートで受けられたら』と感じたことをサービス化したんです。
結果、ニートだったクライアントさんが国立大学に合格されて社会復帰の一助となった成果も出て。現在提供しているWEBサービスは、塾事業を応援してくださった方からのシステム開発依頼を機に事業化を進めてきたもの。
こんなふうに『こういうサービスがあったらいいな』と感じた経験一つひとつが、僕のサービスづくりの源になってきました。」
そうした中、福祉業界にくわしい宇野さんとの出会いは、障がい者の就労をめぐる社会的課題にも関心があった平井さんにとって大きな出来事だったといいます。
平井さん「宇野さんから会社ロゴと名刺制作を引き受けて、デザインについてヒアリングさせてもらった際に印象的だったのは、『これまでの福祉業界らしくないロゴにしたい』という要望。
既存の福祉の常識にとらわれず、社名のBLANCPORTにある“港”からイメージできるように、さまざまな支援事業所のハブ的存在になりたいという宇野さんの思いに共感しました。
実は僕自身もADHD(注意欠如・多動症)とお医者さんから診断を受けたのですが、こうして自分の好きな仕事ができています。
人によって障がいの程度や形態はさまざまなので、もっと多様な就労の形があっていいと常々考えていました。
障がいによって就労のハードルは高くても、周囲の理解とサポートがあれば働くことを諦める必要はないということを、自分の仕事づくりを通して当事者の方々に伝えていければとも思っています。」
障がいをもつ人たちへのIT教育プロジェクト構想が誕生
宇野さんと平井さんのマッチングケースで興味深いのは、名刺づくりの受発注で関係性が終わることなく、その後もお互いの得意分野やスキルを生かして共同事業をスタートさせたこと。
二人は出会ってからわずか2ヶ月後、宇野さんのアイデアをもとにした新しいビジネスプランについて検討を始めました。
宇野さん「僕が運営サポートをしている一般社団法人伸楽福祉会が運営する就労継続支援B型事業所の利用者さんたちに、塾事業を展開した経験のある平井くんをITスキル講師としてマッチングしたら面白くなりそうだ、とひらめいて。
平井くん自身、発達障がいをもつ人たちの役に立つことをしたいと思っていたようですが、福祉業界でビジネスを展開するためのノウハウは十分にはなかった。
そこで僕らが互いの長所を最大限に活用しあえば、画期的な福祉サービスができそうだ、と思い立ったわけです。」
平井さん「障がい福祉とIT技術の組み合わせは、ちょっと意外に思われるかもしれません。が、僕はとても社会的意義のあるプロジェクトだと感じました。
コロナ禍を経て在宅ワークをする人も増え、これからはITに強くなれば障がいの有無に関わらず誰でも心身の状況や家庭環境に応じた働き方ができるようになる、という未来志向型の事業で宇野さんとコラボできるのは嬉しかったですね。」
障がい福祉サービスの就労支援事業所とは、かつて「作業所」と呼ばれていたところ。
現在もパンやクッキーづくり、袋詰め作業などを低工賃で請け負っている事業所が多く、「そうした作業も大事だけれど、このままではいつまで経っても彼ら(障がい当事者)の労働力の価値が高まらない」という問題意識を抱いていた宇野さん。
IT分野で自らの仕事の価値を高めていこうと頑張っている平井さんと福祉サービスをマッチングすることは、業界の固定観念に一石を投じることにならないかと考えたそう。これが、早くも3ヶ月後には事業化された“ノビシロテック”構想の誕生でした。
☞インタビュー後編では宇野さんと平井さんが考える「持続可能なビジネス展開のためのポイント」について伺います!
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