CMの本棚 第5回「壁打ち、相談対応で役立った本」
起業支援に役立つ本がズラリと並ぶ「CMの本棚」。
この本棚には、起業支援施設で働くコミュニティマネージャー(以下略:CM)が推す、起業支援のヒントになる本がいっぱい。
この本棚から今回ピックアップしたのは「壁打ち、相談対応で役立った本」です。
起業家の“よりどころ”になる相談対応
起業家は孤独なものであると、鈴木英樹ツクリエ代表取締役はスタッフに伝え続けています。
ゼロからイチを生み出す起業では、不安や悩みが尽きないもの。
そこで起業家を支えるのがCMの役割です。
特に壁打ちや相談対応は、相手が“本当に言いたいこと”にポイントを置き、それを理解することが大事です。
このような「傾聴力」をはじめとし、起業家にとって信頼できる存在となるには、自身のマインドだけでなく、日々の学びを肥やしていくことで対応力が育っていきます。
そこで、起業支援施設で働くCMが、壁打ちや相談対応で役立ったという愛読本の感想を、リアルにお届けします!
まずお一人目のCMはこの方!
マインドセット「やればできる! 」の研究/キャロル・S・ドゥエック(著)
タイトル:マインドセット「やればできる! 」の研究
出版社:草思社
Qこの本の内容を教えてください
私たちの持つ信念が、どのように日常の挑戦や学びに影響を与えるかを解説しています。
著者のキャロル・ドゥエック博士はスタンフォード大学心理学教授で、モチベーション・人間関係・メンタルヘルスに関する研究では大きな業績を上げてきました。
マインドと聞くとロジカルではない根性論に聞こえるかもしれませんが、この本は違い研究結果やデータをもとに構成されているので、説得力があります。
Qこの本を読んで実践したことがあれば教えてください
かかわっている方(起業家や学生)や、仲間への接し方と褒めるポイントが変わりました。
これが変わると、相手も自発的に行動してくれるようになります。
また自分自身も、困難や挫折の受け止め方が変わり、反省はするものの次回のアクションを考えるような、ポジティブなマインドになりました。
Qこの本のポイントを教えてください
ストーリー仕立てで問題解決の手法を解説しているところです。
中高生でも理解しやすい平易な物語を読み進めていくうちに、読者は自然とロジカルシンキングを身につけることができます。
成長マインドセットを育てポジティブマインドに変えていく
中村さんは、教育分野で仕事していたこともあり「人はどのように成長するか」ということに興味がありました。
本書では「成長マインドセット」と「固定マインドセット」の二つの考え方が紹介されており、双方の違いを理解することで、自分のマインドセットを認識できたといいます。
「努力によって成長できると信じて、新しい挑戦に前向きに取り組む成長マインドセットは、経営者や起業家が持つ『アントレプレナーシップ(新しい事業を創造しリスクに挑戦する姿勢)』と密接にかかわっていると思います。壁打ちを行う際も『この人はいろんな可能性を持っている』というマインドセットを持つことで、壁打ち側の聞き方や表情が変わりました。」
壁打ちをする際には「問い」と「聞き方」がとても重要。
相手の事業がどのようになれば、成長するのかを考えるヒントになるので、これから新しいことに挑戦しようとしている人(起業家、新規事業の担当者)、起業家を支援する人、教育者には一読してほしい一冊です。
続いてお二人目はこの方!
起業の科学 スタートアップサイエンス/田所 雅之(著)
タイトル:起業の科学 スタートアップサイエンス
出版社:日経BP
Qこの本の内容を教えてください
「良いアイデア(課題)の見つけ方」「課題の質(本当に顧客が困っていること)の上げ方」「適切な解決法の見つけ方」「MVP作成と市場に求められるプロダクトのブラッシュアップの仕方」「スケールするために必要なこと」という順番で、起業を志す人が成功するために通るべき道筋について、事例を交えながら分かりやすく教えてくれる一冊。
まさに起業を科学した教科書です。
Qこの本はどんな人にオススメ?
起業をしたいと思い、起業に関する本を何冊か読み終えた人にオススメ。
1から10まで、一通りの流れを知ることができるので、これまでの経験や読んできた本で得た知識の整理もできますし、自分の事業アイデアがどの段階にあるかを客観的に見ることができます。
相談される側も、相談者の段階に応じた、質問を投げかけるための引き出しを作ることができるのではないでしょうか。
Qこの本のポイントを教えてください
「あなたの事業、プロダクトはこれができていますか?」という、肝の部分をアイデア発想からスケールに至るまでの各段階で教えてくれるところです。
起業家にとっては“転ばぬ先の杖”になりますし、相談される側としては相談者の段階をきちんと見極めると、適切な質問ができるようになります。
Qこの本で学んだことは?
実際に起業をして失敗をしてみるまでは「そんなもの、やってみるまで分からないじゃないか」と思っていました。私自身、手芸業界のライフスタイルショップ立ち上げを目指し起業をした経験があるので、それを踏まえてこの本を読むと「そりゃあ、そのやり方だと失敗するよな」と感じました。
自分のプロダクトを受け入れてもらえる人を見つけるだけでなく、顧客が必要とする形へと変えていくことの大切さと変えるための手法を学べると思います。
内容が多岐にわたる壁打ち・相談対応において、自身の経験値だけで対応することに、不安を感じる時期があったという長坂さん。
「そうですね」「いいですね」と、うなずくことしかできないこともあったそうですが、本書との出会いで、変化があったといいます。
「PMF、MVPなど起業でよく聞くキーワードとその概要を知った状態で話を聞くことできると『次はこういうことをヒアリングできるといいですね』と、具体的な提案ができるようになりました。」
著者の主観だけではなく、多数の事例に基づき科学的に分析・構築されているため、起業及び相談対応の基礎固めに最適な一冊といえるでしょう。
起業も相談も、結局何回失敗できるか、その試行回数が大切
以前、長坂さんは革小物を製作販売していた経験があり、現在でも受注生産という形でWebサイトを運営し続けています。
そこで本書を通して、自分の商品においても、買ってくれる顧客はどういう人なのか?ということを考えられるようになりました。
「以前は『自分が良いと思ったものに共感してくれる人に売れればいい』と考えていました。自分自身だけがペルソナだったんです。そこからもう少し踏み込んで『なぜ顧客が買ってくれたのか』『どう使うのか』などを考えたり、ヒアリングしたりするようになりましたね。」
今後この製作販売活動を再稼働させようと考えている長坂さん。
CMの目線と、チャレンジャーの目線を兼ね備えた考え方は、相談者にとって心強い存在になるに違いありません。
「相手に寄り添うマインドセット」と「相談対応の基礎固め」を育む本から経験値を得よう
今回は、CMの中村さんと長坂さんに「壁打ち、相談対応で役立った本」を紹介してもらいました。
CMとして欠かせない「相手に寄り添うマインドセット」と「相談対応の基礎」を学びたい方は、ぜひこれらの書籍を手に取ってみてください。
そこには、起業支援の多くのヒントが詰まっていますよ。
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