ツクリエのコミュニティマネジメント・プログラムに密着【ファシリテーション編】
起業支援施設で、人と人をつなげる交流支援を行い、その場から生まれる価値を最大化していく役割を担うコミュニティマネージャー(以下CM)。
ツクリエではCMの育成にあたる「コミュニティマネジメント・プログラム」を実施しており、スタッフはこのプログラムを経て、日々の幅広い業務内容に役立てています。
今回は、中編として「ファシリテーション」を学んだ様子をお届けします!
「ファシリテーションって何?」
「CMの仕事をする中でどんな役に立つの?」
本記事では、こんなギモンを解決! CMを目指す方はもちろん、企業でリーダー的役割を担う方にとっても参考になるのでぜひ、最後までご覧くださいね。
後編:プランニング編はこちら▼
ファシリテーションとは
ファシリテーションの一般的な意味は、会議や話し合いのような集団の場で、目的に達するまで、スムーズにサポートを行うことです。
これを行う人は「ファシリテーター」と呼ばれ、この名称はよく耳にしますね。
ツクリエにおいて、このファシリテーションのコアスキルのキーワードとなるのは“調整力”や“場作り”そして“マッチング”です。
更に細かいファシリテーターのコアスキルと、CMにとってのファシリテーションの必要性は、次項目で解説していきます。
なぜCMにはファシリテーションが必要?
CMにとってのファシリテーションの必要性については、プログラムで用いられた参考文献に基づき高島さんが話を進めます。
「教育の場を例にすると、今までは先生が生徒に“一方的に教える”が一般的でした。ですが近年ではアクティブ・ラーニング(*)や探求的な学習を行う単元ができたことにより、先生がファシリテーターとなって、生徒たちが自主的にコミュニケーションをとりながら学ぶ活動が増えてきています。このような役割は、教育の場だけでなくスタートアップの現場でも、CMに求められているのではないかと思います。」
(*)アクティブ・ラーニング……能動的学修のことを差し、学修者(児童、生徒、学生等)が受け身ではなく、自ら能動的に学びに向かうよう設計された教授・学習法のこと。
ファシリテーションの概要にある「創ることで学ぶ活動」を創りあげる点では、学校の先生の役割変化になぞらえると分かりやすいですね。
ファシリテーションは、単なる司会や管理者でなく、民主性を持ってまわりと一緒に目的に向かっていくために必要であることが分かります。
コミュニティマネジメント・プログラムの中身を公開
コミュニティマネジメント・プログラムのファシリテーション編では、ウォーミングアップを兼ねた壁打ちトレーニングからはじまり、ファシリテーションを“科学する”ことを中心に、講義とディスカッションが展開されました。
講義|ファシリテーションを科学する
ファシリテーションもコミュニティマネジメントというものも、私たちは会社から明確な定義をされて現場にいるわけではないと、高島さんは話を続けます。
「CMは、不透明な定義の中で自分なりのコミュニティマネジメントを捉えて、一緒に働くメンバーと価値観を共有し、ファシリテーションを続けていく必要があります。」
ディスカッション
ファシリテーション編では“会議の進行”という、日常のワンシーンを題材に進めたという高島さん。
「ファシリテーターの役割を分割して個々が担うことで、段階的にスキルを高める狙いを持ってカリキュラムを組みました。」
その工夫がみられたのが、ディスカッションの場で活用した「ファシリテーションカード」。
3枚それぞれに役割が書かれたカードはランダムに参加者に配られ、参加者は各役割を意識しつつ、ディスカッションを展開します。
ディスカッションを終えた後、各グループの代表者から発表がありました。
渡邊さん「なぜ最近“コミュニティ”と呼ばれるのだろう? の話題から始まりました。以前は友だちと交流するオンラインツールから、不特定多数が閲覧できる掲示板が登場し、SNSが普及したあたりからコミュニティの名が出てました。今までの時代の流れと現在のコミュニティの違いをふまえ、コミュニティは自己開示を元に一緒に活動をしていく。みんなで良くしようという思想の団体がコミュニティなのではないかと話をしました。」
嶋田さん「コミュニティを想起させるワードとして出たのが“好き”の気持ちを共通する、そして“経験”を共有することです。人間関係をつなぐ入り口がコミュニティなのではないかと意見が出ました。」
和田さん「私たちは、CMの役割や意味について考えました。コミュニティマネジメントは、時間と労力をかけても、すぐには会社の利益にはつながらない仕事です。コミュニティマネジメントをする上でのマインドは“目の前の利益にはならずとも、人脈といった財産や人同士のつながりを意識する”ことです。私たちはマネジメントの内容を活性化し、コミュニティの内側だけでファシリテーションを行うだけではなく、コミュニティの外側の部分ではマッチングを行います。CMとして頼られる管理者・話しかけやすい人になるために、ルールを改善しながら、この取り組みを後世につないでいくのもまた、CMの役割なんだと思います。」
澵井さん「直接的な会社の利益にならないのに、なぜコミュニティの運営をしているんだろうって話にもなりました。CMの仕事は、最終的に人のつながりや人脈が会社の利益となり、自分自身への利益にもなります。一人が10のコミュニティに入っていたとして、そこで100人いたら1,000のコミュニティができます。私たちが普段取り組んでいるコミュニティづくりはお金ではなく、人の財産であることが見えてきたように思います。」
稲山さん「私たちのグループメンバーは異なる現場にいるため、CMの仕事をみなさんに確認したところ、その内容はそれぞれでした。一方ではコネクションをつなげ、一方では連続されたプログラムの参加者を一つにまとめ、その中で情報交換をする。ただ“バラバラの場所にいる人たちに共通項を見つけて場を提供する”のはいずれも共通しており、形は違えどCMの役割は一緒だと再認識しました。共通項を持つ方にとって、CMは最初の“着火剤”になり、その炎を大きくするのはお客様ではあるものの、コミュニティの活性化を演出することは容易ではなく、これがCMの仕事の大変さでもあると感じました。」
今回、高島さんとともにファシリテーターを務めた市川さんから、ファシリテーションカードを用いた感想としてこのようにコメントがありました。
「今回は役割が決められていることで、それぞれが役割を意識している姿がみられました。また、サマリーカナリー(ディスカッションのまとめ役)を引いた一人の参加者のまとめている姿に、思わぬところで意外性を感じました。」
コミュニティマネジメント・プログラムを担当した高島聖也さんよりコメント
コミュニティマネジメント・プログラムのカリキュラムをつくる上で、高島さんに苦労した点をたずねると、このようなお話がありました。
「まずは難易度の調整についてです。個々の経歴や担当する現場ごとに経験値が異なるため、参加者がどのような人であっても、学びを得られる設計にしました。また、専門性の担保として、書籍や先行研究を参照にしたほか、大学の公開講義やオンライン講座で、自ら学んだ内容を下地にしています。」
更には講義を“聞くだけ”にならないよう、全体の50%程度を対話や発表に占め、インプットとアウトプットのバランスに留意したそうです。更にはシーズン終了ごとにアンケートを取りながら、支援現場の実情と合わせて都度改善を図っているとのことでした。
コミュニティマネジメント・プログラムはブラッシュアップを重ねることで、カリキュラムの質を上げ、参加者の学びの習得はもちろんのこと、CMとしての成長にもつながっていくんですね。
次回は、いよいよコミュニティマネジメント・プログラムの「コミュニケーション編」。
プログラムに参加したツクリエスタッフの、心情や行動の変化も併せてお届けします。
乞うご期待ください!
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