副業や起業も応援します! ツクリエを卒業した気鋭の起業家インタビュー
ツクリエが2020年6月に副業を解禁してから、まもなく3年。これまでに約18%の従業員が副業制度を利用して、独自のキャリア形成に取り組んできました。ヨムリエでも昨年から副業をテーマにした「今ドキ!副業STYLE」シリーズ記事を掲載中。
今回は本業と副業を両立しながら独立を目指して準備を進め、起業後の現在も卒業したツクリエと良好なビジネス関係を実現している元社員の起業家にスポットを当てます!
1975年兵庫県神戸市生まれ。
20年間にわたるホテル勤務にてレストランやバーラウンジのマネージャーを経験したのち、同ホテル内の新規事業の責任者として、リラクゼーションスペースの立ち上げから運営までを担う。同事業を黒字化させたのを機に、ネット集客に必須のホームページやランディングページ作成などWEB制作に特化するため個人事業主に転向。
その後、結婚を控えワークライフバランスを見直し、休日と安定収入が確保できる会社員に復帰すべく2019年1月ツクリエに入社。大阪のコワーキング施設「Ogyaa’s(オギャーズ)梅田」マネージャーを務めたほか、山口県山口市に2021年4月オープンした「産業交流スペースMegriba」施設長として開館準備を手がけた。
SEO対策をメイン業務とした副業を開始したのは入社2年目あたりから。そして、本業である起業支援の奥深さを知るほどに自らも起業への思いが募り、2021年11月にツクリエを円満退社。WEB関連業務の専門性をより高めるため制作会社への転職を経て、2022年4月に「株式会社グッドラフ」創業。現在、戦略策定、マーケティング、ホームページ制作、SEO対策、広告運用、DX支援、集客支援などの事業を展開している。
社員独自のキャリア形成を
支えてくれる会社のありがたさ
働き方改革の一環として、政府が示した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」。
この中で副業や兼業を推奨する理由のひとつに、会社員が本業以外の職業スキルや経験を得ることにより、主体的なキャリア形成や所得増加に役立つためとされています。企業側にとっては従業員の副業経験から新たなアイデアが生まれ、本業のイノベーション促進が期待できるとも。
今回インタビューさせていただいた株式会社グッドラフ代表取締役の小巻正継さんは、ツクリエ社員時代に副業し、主体的なキャリア形成をされています。まずは副業を始めたキッカケから教えてもらいましょう。
小巻さん「長年のホテル勤務とWEB制作の個人事業を経てツクリエに転職してから、しばらくはコワーキングスペースのマネージャー業務に奔走する日々。副業について、具体的に行動に移す余裕はありませんでした。マネージャーとして施設の損益管理をしっかり行い、売上向上を図るという責任の重いミッションがありましたから。
その上、利用者さま同士の交流促進やビジネスマッチング、相談業務や資金調達サポートといった起業支援と、それらにまつわるイベントを企画するなど、さまざまな角度から起業家の方々をサポートできる環境に身を置いて、楽しく仕事をさせてもらっていました。
ただ、入社2年目あたりに相談業務の際、利用者さまからSEO対策について質問されたのがキッカケで“副業”というワードが頭をよぎるように。その時、最新情報などを盛り込んだ具体的なアドバイスができなかったことで、自分のWEB関連知識の鮮度が落ちていることに気づかされたんです。」
個人事業主時代には、毎日のように手がけていたSEO対策。しかし、日進月歩のIT業界から2年近く離れていると、頻繁なGoogleのバージョンアップや続々とリリースされるWEBサービス情報に追いつくのが大変! ということで、小巻さんは今後のキャリア形成の一環として、あらためて最新のSEOツールを導入しようと考えたそう。
小巻さん「とはいえ、プロとしてSEO対策するためには複数のツールを導入する必要があって、それなりに費用もかかる。その分は副業をして回収したいと思ったのです。当時、まだツクリエでも副業制度が整っていなくて、副業をしてもいいのかどうか分からない時期でした。
けれど、HRチームに問い合わせたところ理解してもらえた上に、将来どのようなキャリア形成を望んでいるのかヒアリングしながら相談にも乗っていただいて。おかげで、社内で周囲の目を気にせず副業に取り組めたのはありがたかったですね。まだまだ副業禁止の企業が多かった時期、ここまで社員に配慮を示してくれる会社は珍しい、と感心したことを覚えています。」
起業支援を通して
見えてきた独立への道すじ
その後、ツクリエでは副業制度や起業支援制度が整えられ、小巻さん以外にも副業を始める社員が現れるように。
小巻さんのワークスタイルは、平日は本業のマネージャー業務に集中し、休日の土日を使って副業のSEO対策業務を請け負うというもの。初めのころは「当初の予定どおり、SEOツール設置にかかった費用を回収できて、多少の利益が出る程度」だったそう。
小巻さん「それからまもなくOgyaa’s梅田のマネージャー業務のほかに、山口市に新設する産業交流スペース施設の開館準備を任されることに。月に2〜3回、山口に出張しながら事業計画の策定から市との調整、現地スタッフの採用・教育といったプロジェクトを進めていたため、副業をする余裕はほとんどない状態でしたね。
それでも“ゼロからイチ”をつくり出していく仕事は、緊張感がありながらもワクワクしながら取り組めました。自分自身の成長にもつながる素晴らしい機会をいただいたと感謝しています。」
こうした経験を経て、小巻さんに次なる変化が訪れます。起業家をサポートし、起業支援の場づくりにも携わってきたことで、「自分も起業してみたい」と感じるようになったのだとか。
小巻さん「起業という目標に向かって努力をされている方々に寄り添ううちに、自分もウズウズしてきたというか。こうした思いは、起業支援に真っ直ぐなツクリエで働けたからこそ、生まれたものだと感じます。」
そして2021年4月「産業交流スペースMegriba」が開業。引き続き出張しながら施設の運営管理を担っていた小巻さんに、ツクリエ本部から山口への転勤が打診されます。
小巻さん「立ち上げから関わった思い入れの深いMegriba。その施設長として、これからも思う存分に働けるチャンスでした。しかし、家庭の事情で関西からの引っ越しや単身赴任が難しかったことから、転勤はお断りすると決意。代わりに別のマネージャーが山口赴任を快諾してくれましたが、私としては職責を全うできなかったことから会社を辞めさせていただこうと考えるように。結果的に、この時の決断が独立のきっかけとなりました。」
当時、小巻さんが描いていた起業のイメージは副業で行ってきたSEO対策のほか、ホームページやランディングページ制作をメイン事業にした会社設立だったといいます。さらに独立するからには「しっかり結果を出す」と決め、IT業界での経験を積むべく大阪の制作会社に転職した上で起業するという念の入れようでした。
ツクリエ時代の仲間たちと
独立後もWin-Winの関係を築く
2022年4月に「株式会社グッドラフ」を創業した小巻さん。実は古巣であるOgyaa’s梅田の会員になったといいます。理由は「ワーキングスペースとしての利便性と、ビジネスマッチングの機会があること」。実際、会員同士でのマッチングで新規案件が生まれているほか、ツクリエからマーケティング分析などの仕事も請け負っています。
小巻さん「こうして退社後もお仕事をいただけるのは、ありがたいことです。かつて働いていた分、会社の内情も理解した上で提案などさせてもらっています。
ちなみに起業する前は、SEO対策とWEB制作をメインに事業展開していくつもりでしたが、いざ始めてみるとマーケティングや戦略立案、キーワード選定や競合調査など、ホームページづくりの前段階のご依頼が多くなっています。」
さらに意外だったのが、すでにホームページを公開している事業者から「集客が上手くいかず困っている」という問い合わせが多いこと。こうした案件には戦略策定からサポートし直す必要があり、「起業支援やWEB制作など、これまで勤めた会社や個人事業で手がけた業務経験とスキルを上手く融合してご提案できるようになって、ご好評いただいています」と、成果が出てきたことを実感しているそう。
そんな小巻さんが、これから目指すのは“ものづくり支援のしくみ”をカタチにしていくこと。その一環として、ツクリエともイベントなどで「ぜひコラボできれば!」と満面の笑顔を見せます。
小巻さん「ゆくゆくは“ものづくり支援”ができるようなプラットフォームもつくりたいと考えています。その前段階として、まずは我が社が制作会社としての地位をしっかり確立すること。
次いで他社ブランドの製品を製造するOEM(Original Equipment Manufacturer)対応可能な工場と連携・紹介できるメディアもつくって、さまざまなクリエイターさんたちのアイデアを商品化するお手伝いができれば、と。そうしたプロジェクトの中で、ツクリエさんとも関連イベントなどでコラボしながら、これからもWin-Winの関係を築いていけたら嬉しいです!」
センパイ起業家One Point アドバイス
使命感や情熱も大事だけれど、それだけじゃ済まないのが起業のリアル。会社員から独立するまでに心しておくべきポイントについて、小巻さん自身の体験談も踏まえて教えてもらいました。
「法人設立後、スムーズに事業をスタートできるよう、しっかり事前に準備しておいてください。」
ツクリエ時代の小巻さんが相談業務で、よく起業家の方々にアドバイスしていたセリフだそう。起業を決意したら事業計画策定や資金調達など、やるべきことが山積するためです。
ところが、小巻さんは「実は法人化した初月は予想以上の書類作成や事務作業に追われて営業活動がままならず、納品できた仕事の売上は2万円だったというニガい経験が……」と苦笑い。
法人として事業を開始するまでには、会社の商号や事業内容を記した定款や設立登記申請書などを作成して税務署や法務局に提出する必要が。こうした手続きには期限があったり、必要書類を役所から取り寄せるのに時間や費用がかかったり、思いのほか煩雑な事務作業をこなさなければならないのだとか。
「かつて起業家さんたちに『しっかり準備して!』と発破をかけていたのに、自分の起業時は準備不足な結果でお恥ずかしい限りです(苦笑)。このことからも、まずは副業で『これならやっていける』と思えるだけの売上を確保。法人設立後、しばらく売上が少なくても事業をまわせるだけの資金的余裕をもった上で独立されることを強くオススメします!」
ライフステージの変化にあわせ、柔軟に働き方を変えてきた小巻さん。それぞれの仕事を通した出会いや経験を成長の糧としながら、起業にいたるキャリア形成に挑んできた印象です。
「とりわけツクリエ時代に起業家の交流促進やマッチング、相談対応など様々な起業支援業務に携われたことは、私にとって大きなスキルアップとなりました。こうした経験を積ませてもらったことで、私自身も起業の道にチャレンジできたのだと思います」と、持ち味のビッグスマイルで最後にひと言。
そんな新鋭起業家・小巻さん×ツクリエのコラボで、今後どのようなアイデアやクリエイションが生まれるのか楽しみです!
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