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起業は「めっちゃオモロい」と言い切る 若き起業家の仲間愛にあふれたリーダーシップに迫る!


「仲間と一緒に楽しく仕事をしたい」。その想いひとつで、大学卒業と同時に友人と起業した株式会社CONE代表の佐藤立樹さん。昨年、ツクリエが運営するレンタルオフィス&コワーキングスペース「Ogyaa’s梅田」に入居して以来、順調に事業規模を広げられています。

4期目の現在は、メイン事業の企業向け資料作成代行サービス「c-slide(シースライド)」が好調で、リリースから1年で受注企業数は200社以上に。新しいプロダクトも次々開発していますが、創業当初はかなり苦しい時期をかいくぐってきたのだとか。

創業から苦節3年を経て見えてきた起業の醍醐味とは何か。友人と会社を共同経営することへの本音、ツクリエの起業家支援を受けて感じたことなどもお聞きしました。

佐藤 立樹さん
株式会社CONE 代表取締役CEO
立命館大学在学中、周囲が就職活動を始めるのを横目に、大阪経済大学の学生だった友人の佐々野力さん(現取締役CTO)と起業することを決意。WEB制作のベンチャー企業など2社でインターンを経験し、両者大学卒業と同時に株式会社CONEを設立。

成果が出ない創業期の“痛み”から生まれたこだわり

会社PRからサービス営業、ウェビナー、採用ピッチまで、あらゆるビジネスシーンで必須となる資料づくりを請け負う事業展開で成長している株式会社CONE。

2021年から開始した資料作成代行サービス「c-slide」は、目的に応じたパワーポイント資料の企画構成からビジュアライズまでを行い、シンプルで汎用性の高いデザインであることから、1年で利用企業は200社以上に。

短納期と個人発注並みの低価格も人気の秘訣である同サービスは、「成果に直結しない努力を減らす」という佐藤さんの強いこだわりがベースにあるといいます。

佐藤さん「具体的には資料作成のために残業する人を減らしたい、というのがc-slideを提供する上での目標です。僕たちが資料づくりを代行することで、たとえば営業職の人が資料のデザインや説明文を考えるのに手間取って残業することなく、本来業務で成果を上げるために時間とエネルギーを集中させることができたらいいな、と。

最近では、人材によってバラツキのある営業スキルを標準化させるツールとして、c-slideで作成した資料に沿って商談を進めるクライアント企業の営業部も増えてきました。

CONEのホームページより

多くの社会人は1日の大半を仕事に費やしています。自分が本来やるべき業務以外のところでシンドイ思いを続けていたら、成果が出ずに仕事をする意義を見失うだけでなく、日々の生活そのものの幸福度が下がってしまう。

僕ら自身、身を粉にして働いても成果を出せないツラさを創業から1年半の間に味わったこともあり、どうしたら誰もが自分らしく楽しく仕事をして、成果を出していけるビジネスの仕組みをつくっていけるか、ひたすら考えてきたんです。

“知る”を助けてくれる起業支援の重要性を痛感

今でこそ「c-slide」の業績が好調なCONEですが、佐藤さんと共同経営者の佐々野さんは社会人経験ゼロの状態から起業したこともあり「創業当初はビジネスについて知らないことが多すぎて、成果につながらない努力を繰り返しては疲弊していた」と言います。

佐藤さん「もともと、やりたいコンテンツがあって起業したというより、友達の佐々野と楽しく仕事をしていくには起業がいいと考えて。今考えると世間知らずで“アホやな”と思いますが(笑)。

でも、そのとき自分たちの持てるスキルを集めて、WEB・動画・グラフィックデザイン制作のクリエイティブ事業を展開しようと、関西エリアの企業に手当たり次第、営業電話をかけました。

が、結果は惨敗。かろうじてアポが数件取れても、営業先の事業内容に応じた提案資料を逐一作成しては結局失注するパターンの繰り返し。

実績ゼロのベンチャーでは当然の成り行きですが、当時の僕は睡眠時間を削って資料をつくり、佐々野は夜勤バイトをして、二人で借りた一軒家オフィス兼住居を維持するのもやっとでした。」

そのうちオフィスの水道や電気も止まってしまい、佐藤さんたちは生活自体も厳しい状況に。これまでのやり方を続けていたら会社が潰れる。まずは、やみくもにサービスを売ろうとすることを止め、しっかり会社として成立させるための事業方針を真剣に考えたと言います。

佐藤さん「僕らの得意分野は、営業ではなくクリエイティブ制作です。どうすれば営業にかける時間と労力を効率化し、制作活動にエネルギーを注げるかを考え、営業先を広告代理店のみに絞ることにしました。

代理店各社に『制作の人手が必要なときは最安値で請け負います』とCONEが手がける制作物の見本資料を配ったところ、次第に注文が入るように。要は広告代理店の営業マンが僕らの分も仕事を取ってきてくれているようなものです。

なぜ最初から、このことに気づかなかったのだろう、と(苦笑)。それまで僕らの営業にかけた苦労はいったい何だったのか!?と、唖然としました。

【Before】制作物の見本資料

 

【After】制作物の見本資料

でも、それだけ僕たちはビジネスのやり方を知らなかった、ということ。友達と楽しく仕事をするための近道として起業を選んだはずなのに、正反対の成果の出ないツラい時期を大事な友達に過ごさせてしまった。

それに創業当初からツクリエさんが提供しているような起業支援という仕事の存在を知っていたら良かったとも思います。起業の専門家からいろんな知識や知恵を学び、多くの選択肢を持つことができていたら、報われない努力に時間をかけ過ぎてしまったという後悔が残ることはなかったでしょう。

すべての努力が報われるわけでない。「努力の“仕方”こそが、めちゃくちゃ大事」と実感をこめて語る佐藤さん。

その後、会社が3期目に入る頃に、高校時代の友人だった湯浅さんが新卒で入社した大手企業を辞めてCONEに転職してきたことを機に、クリエイティブ制作のみだった事業形態にも大きな変化が起こりました。

仲間は財産。「彼らと会社を良くして、一生を終えられたら本望」

仲間が増えた会社の次の一手として、佐藤さんは広告代理店を通さず、直接クライアント企業を開拓するための新たな事業をつくろうと提案。資料作成代行業務を経験したことのある湯浅さんのアイデアから「c-slide」の仕組みが生まれ、まもなくリリースされました。

その後、佐藤さんはもう一つの決断として一軒家を手放し、「Ogyaa’s梅田」のコワーキングスペースへのオフィス移転を行っています。

佐藤さん「いろんな経験をした一軒家オフィスへの思い入れはありましたが、c-slideの受注も増えてきたタイミングで、会社として効率よく事業拡大していきながら仲間を増やしていくためには“働きやすい環境”をつくることが大事だと考えたんです。

結果的にコワーキングスペースに移ったことは正解でした。他の施設入居者のみなさんは当たり前と思っているかもしれませんが、いつも電気が使えて空調も心地良く、清潔な空間があって、相談したいときはスタッフさんが丁寧に対応してくれる。こうした物理的かつ心理的安全性の高い環境は、一軒家オフィスで辛酸を舐めた僕らにとっては、決して当たり前のものではない!と声を大にして言いたいですね(笑)。

事業内容についても、コミュニティマネージャーさんに『これ、どう思います?』と相談したり、僕らの会社の規模や課題に応じたセミナーやイベント情報を紹介してもらったりして、ありがたかったです。」 

その後、「c-slide」がクリエイティブ事業の収益を超えてメイン事業となり、社員や業務委託スタッフが増えたこともあって、コワーキングスペースからプライベートオフィスへと同施設内で引越しをされたCONEのみなさん。

「仲間と楽しく仕事をしたい」と起業した佐藤さんらしく、縁あってCONEに来てくれた仲間たちが気持ち良く仕事ができる環境づくりに心を配ります。

コワーキングスペースからプライベートオフィスへ引越し

佐藤さん「僕にとって仲間は貴重な財産です。特に学生時代からつき合いのある佐々野と湯浅は、まったく利害関係なく仲良くなった親友たち。彼らと一緒に仕事をつくって成果を出して、社会にも貢献していける人生って最高だ、と心から思います。ツラい時期もありましたが、それを一緒に乗り越え成長してきた今があるから「起業って、めっちゃオモロい!」と思えます。

友人同士で起業することのリスク、つまり後々に経営方針の違いなどで仲間割れしやすいのでは?といった心配もあると聞きます。が、僕の場合は事業拡大よりも大事なのが、仲間と楽しく仕事を続けていくこと。

経営や事業方針に意識のズレがあればトコトン話し合えばよく、ケンカになることもあるかもしれない。けれど、自分の隣に彼らがいない会社を想像することのほうが僕にはツラい。ちょっとウザいかもしれませんが(笑)、今の仲間と一緒に会社を良くして一生を終えられたら、僕はそれだけで本望なんです。」

人情味あふれる仲間愛をもちながら、合理的思考で仕事の成功確率を上げるための職場環境や事業づくりに邁進する佐藤さん独特のリーダー像が見えてきたように思います。

佐藤さんが繰り返し語られていた「成果に直結しない努力をどれだけ減らせるか」「その人らしく仕事ができる成果への近道となるサービスを提案していきたい」

こうした理念は、ツクリエの起業支援の在り方にも通じるものがあります。資料作成の分野でNo.1シェアを目指していくというCONEの取り組みを、深い共感をもって今後も応援させていただきたいと思います!

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