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コミュニティづくりの種まきと裏仕掛け

ツクリエのコミュニティマネージャーには、起業支援施設での「コミュニティ形成」という大事な役割があります。全国津々浦々で事業展開をしているツクリエ。コミュニティづくりは、配属先の施設、プロジェクト、地域性によりやり方が変わってくるはず。

そこで今回は、茨城県にあるツクリエオリジナルの起業支援施設「StartupSide Moriya」に注目。
茨城県守谷市初のコワーキング施設となったStartupSide Moriya(以下SSM)では、どのような戦略でコミュニティづくりをしたのか、施設マネージャーの森さんにお話をうかがいました。


「住みよさ」ランキング上位にランクインするなど、住みやすさから注目が集まる茨城県守谷市の商業施設内にあるインキュベーション施設。

StartupSide Moriyaコミュニティマネージャー
森 哲也さん
会社員として、商社での法人/個人営業、大手予備校での受験指導や会場運営・マネジメント、人材育成などに従事。その後退職し、2021年に起業。趣味の車に関わる事業を中心に、物販や営業代行など複数取り組む。 現在ではツクリエに所属し、自身の経験を活かして相談対応や各種イベント企画など起業支援を行う。

茨城県守谷市の地域性は?

森さん「守谷市には、都内を含む圏外からの移住者が多く、地元の風習を大切にしながら、新しい取り組みにも積極的に挑戦する文化があります。拠点や工場を構える大手企業だけでなく、起業や副業に取り組む個人事業主の方も多いように思います。顔見知りも多く地域密着のビジネスになりやすい傾向なので、“紹介で脈々とつながっていく”という印象です。」

守谷市に顔を売る。そんな種まきからスタート。

森さんの種まきは、SSMの施設マネージャーに就任したときから始まりました。土日は特に守谷市でのイベントが多く、森さんは積極的に参加していたそう。参加者たちと会話したり、一緒に写真を撮ったり、それをSSMのXやFacebookで発信したり。
そうやって地元のコミュニティに入り、3ヶ月ほど経った頃、守谷市の方々に“森さん”という認識が生まれ、関係を構築した人がまた別の知人をどんどん紹介してくれるようになったのだとか。

イベントを通したコミュニティづくりで、多面的な価値を提供!

SSMのイベントは、座学だけでなく、交流会やワークショップなど“交流や繋がり”を意識したイベントも開催しています。施設側が会員さんを知る、会員さん同士がお互いを知る。ときには施設のアルバイトさんや地域の事業者、団体の方々など幅広い層の方がイベントに参加し、SSMのコミュニティ要素を強めていきます。


交流会では、自己紹介、自身の事業、会員さんの開催したイベント報告などで大盛り上がり。


お菓子とお茶を用意したデザイン作成のワークショップでは、アルバイトさんも参加。イベント後はレポートを作成し、施設内の掲示板で参加者さんたちの作品をご紹介していました。

森さん「守谷というエリア特性から、常に新規顧客を獲得し続けるというより、地元に受け入れられてリピーターを増やす戦略が重要になります。そのため、事業展開にあたりつながりを増やせるマッチング機会があれば、積極的に顔を出す人が多くいます。“施設を売る”ことも大事ですが、イベント参加者にとって得られるものを多面的に提供する、という意識が重要だと考えています。」


SSMがオープンして約1年が過ぎた頃、つくばエクスプレス沿線の地域をより活性化するため、沿線にある複数のインキュベーション施設の運営メンバーを招待し、トークイベントを展開。

森さん「つくばエクスプレス沿線の秋葉原駅からつくば駅までには、大学・研究機関を含む多くのインキュベーション施設が集まり、地域形成に関わっています。それぞれ施設の利用方法や取り組みを知ることで、各地域における“ビジネスの可能性を広げていく場”になれば……という思いのほか、別の意図もありました。」

別の意図とは……?
森さんが教えてくれたのは下記3つ。

其一 他施設の利用者さんと接点を持てる

其二 他施設のノウハウを知れる

其三 他施設の運営メンバーや利用者さんにSSMを知ってもらえる

こうした裏の意図もはらみつつ開催したつくばエクスプレス沿線イベントでは、他施設の運営メンバーと連携する関係性が生まれたそうです。その結果、SSMの人気クラウドファンディングイベントを共催することに!


つくばの交流拠点となり、多様な働き方や活動をサポートする場所「co-en(コウエン/コーエン)」との共催イベントを実施。会場を提供いただき、司会もお手伝いいただいたとのこと。
イベント前にはco-enとSSMのスタッフがラジオ番組でイベントを宣伝。このほか、会員交換留学Dayと題して、お互いの施設を無料で使える日を設けたのだとか。

守谷市のコミュニティにJoin!

守谷市の人気イベント「ふるさ都市もりや朝市」に2度出展。初出展は2月の寒い時期。SSMブースでは施設やイベントの紹介、また起業・副業相談も実施したそうです。初めて施設の枠を飛び越え、守谷市の方々と交流を持てた良い機会だったとのこと。
2度目は夏の暑い時期、守谷市との共催イベントで出展。酷暑から朝市は中止され、涼しくなる午後からの「夕市」が開催されました。


2度目の出展、夕市での様子。守谷市との共催イベントについては後述します。

守谷市役所で開催している街づくり会議に出席

守谷市役所開催の“街づくりの会議”に出席していたという森さん。この会議には、商業施設を盛り上げる目的でテナントだけでなく、守谷市を代表する企業や団体、町内会など、さまざまな分野の人々が参加していたのだとか。
森さん曰く、街づくり会議に出席していたのも、コミュニティづくりの種まきの一つだそう。出席する回数が増えるにつれ、「ツクリエさんはどう思いますか?」と意見を求められるようになり、徐々に地域での知名度向上や信頼につなげることができたのだとか。

それではここで、街づくり会議の場から発展したネットワーキング効果をご紹介します。


守谷市×SSM共催のイベント「アントレプレナーシップ教育プログラム~夏休みに起業家体験をしよう~」を開催。小学生を対象に、夏休みの3日間に渡り、起業家教育プログラムを実施しました。


3日間のイベント会場は、SSM、前述した夕市、守谷市役所本庁舎の大きな会議室でした。最終日には守谷市長もご参加くださいました!


守谷市の広報誌「広報もりや」でもイベントの告知をご紹介してくださいました。

以上が、森さんにおうかがいしたSSM流のコミュニティづくりでした。

コミュニティマネージャーのミッションでもある「コミュニティ形成」は、施設や地域性により戦略は変わります。つくばエクスプレス沿線イベントのように「一見普通の催し」に見えても、その裏には集客以外の目的も。

ツクリエの「起業支援施設運営」は、施設の規模により関わるスタッフの数が違います。SSMは小規模ゆえ、コミュニティづくりはおもに森さん単身の手にかかります。コミュニティづくりで悩んでいる方は、ぜひ森さんの見えざる種まき、見えざる戦略をご参考ください。

最後に森さんの挑戦してみたいコミュニティづくりを教えてもらいました。

森さん「これまで起業家、行政、そのほか支援機関などさまざまな方が一堂に会するイベントをハイブリッド配信で実施してきました。ときには海外からの参加者もいて、可能な限りコミュニティの幅を広げてきました。このような催しが開催された際、各自がSNSなどを通じて拡散してくれていますが、いずれはメディアの方々も巻き込んで、さらに多くの人々に届けられるイベント・コミュニティ形成をしてみたいですね。」

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