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知っておいて損はない! プレスリリースの基礎知識


起業やビジネスに役立つ知識を“サクッ!”と学べる「ヨムリエの学び舎」。

このシリーズでは、ツクリエ社員が研修やイベントなどで登壇した内容を“ヨムリエのテイスト”に味へんしてお届けします。

第3回目の授業は、報道機関に情報を発表する、公式な文書である「プレスリリース」。 プレスリリースの基礎知識は、リリースを書く担当者だけに役立つものではありません。 魅力的な文章の書き方、適切な表現方法、メディアの特徴なども学べるので、ぜひ参考にしてくださいね。

講師紹介

海渡 雅由さん
1991年(株)博報堂入社。人事を9年、雑誌営業を8年経験し2011年に退社。その後、フリーとして(株)文藝春秋や他メーカーでの新規事業開発やイベントセミナー運営、化粧品会社のPRなどを経て、広報・PR・ブランディングをメインにした法人を2014年に設立。2016年の開所時より起業支援施設「Startup Hub Tokyo 丸の内」の広報・PRとして携わり、現在はグループ親会社や自社の広報、ツクリエで運営する広報の責任者として従事。また新規事業としてベンチャーや起業家を対象にしたブランディング支援サービスを行っている。

授業の前に

今回ご紹介する授業の内容は、2024年8月にツクリエの「ツクスタ(*)」で開催した「プレスリリースの基礎知識」から抜粋したもの。

*ツクスタ……社員同士でさまざまなスキル・知識・経験などをシェアする、社内勉強会のような場。詳細はヨムリエの記事内「教える? 学ぶ? 得意をシェアする「ツクスタ」の二面性にせまる!」でご紹介しています。

それでは、まずは授業の前に、プレスリリースとは何かを簡単におさらいしておきましょう。

プレスリリースって何?

プレスリリースとは、新製品・新サービスやイベント、企業動向といった情報を企業・団体からメディアに知らせることをいいます。
プレスリリースを通してメディア(テレビ・WEB・新聞・雑誌など)に取り上げてもらうことで、その情報が世の中に広がります。

広告とプレスリリースの違いって?

広報(プレスリリース)と広告の違いは混同しやすいですが、実はこれらは全く異なるものです。
ここでは4つのポイントに分けて、プレスリリースと広告の違いを解説します。

☞掲載判断
広告主の判断で掲載できる広告に対して、プレスリリースではメディアが掲載判断をするため、必ずしもその情報が掲載されるわけではありません。

☞コスト
人件費がメインになるプレスリリースに対して、広告では広告料が大きくかかります。

☞タイミング
メディアが情報の掲載のタイミングを決定するプレスリリースに対して、広告では企業側が決定できます。

☞信頼度
企業が書いた情報を客観的に発信するプレスリリースは、信頼度が高いです。広告は企業側のワンウェイになるため、比較するとプレスリリースの信頼度のほうが高くなります。

ネタ作りのポイント

プレスリリースは、ただ情報発信すれば良いものではありません。“メディアの目に留まる”リリースを書くことが最も大切なんです。印象的なリリースを書くためには欠かせない、ネタ作りのポイントをレクチャーします!

☞読む人(記者)が何を求めているか
記者の頭の中では、媒体との相性、好きな切り口、追っている情報の3つが重なるところを提案できるのが理想です。ですが、そうとはいっても3つのポイントを押さえたネタの提案は、けっして簡単ではないですよね。そこでもう一つのポイントとなるのが「複数の視点を持つ」ことなんです!

☞複数の視点を持つ

自分の言いたいこと・伝えたいことだけに終始しないこと。また、データやランキング、事例などを活用し、信ぴょう性のある『記者の求めている情報』をネタとして提供すること。このように、読み手(記者)のことを考えてリリースを書くことを大切にしてほしいです」と、海渡さん。

ここでの「複数の視点を持つ」意味は、企業として出したい自社情報(ネタ)を「PRの視点(社会性、公共性、時事性、地域性、新規性、革新性など)」と掛け算して、リリースのネタを作っていくこと。
つまり「伝えたいこと」と「メディアのニーズ」を掛け合わせたネタを探すのが重要です。

プレスリリースの書き方

それでは実際にプレスリリースの書き方を、海渡さんから解説してもらいましょう。下記図の構成要素の中で、特にポイントを置きたい点はどこにあるのでしょうか。

「②タイトル・サブタイトルへの「!」「?!」は、記者からの評判はイマイチですが、使って悪いわけではありません。ただし、乱用は避けるようにしてほしいですね。
また、⑤の企業情報については、まだ世間に知られていない小さな企業さんの場合、企業の設立のストーリーやミッションを書くと、記者の目に留まりやすくなります。」

構成のポイントは?

☞テーマが明解で簡潔
「1リリース、1テーマが基本です。魅力的なキーワードを含み、シンプルに伝えましょう。」

☞ニュース性がある
「時事性・話題性はもちろんですが、生活者視点×ストーリー、社会背景・課題×自分事化といった掛け算を意識してつくると、ニュース性としてメディアに取り上げられやすくなります。」

☞5W5Hで情報整理されている

「5Hは1Hでもかまいませんが、特に5Wは大事にしてほしいです。情報整理をしながら、文章の客観性を意識して書きます。表のように、5W5Hを表にしてリリースの内容を整理すると、スムーズに書けるようになりますよ。」

文章表現のポイント

☞一文を長くしない
簡潔に伝える(文章は長くなればなるほど伝えたいことから離れる)

☞具体的な表現を使う
大げさな修飾語(大好評・かわいい・かっこいいなど)は使わない

☞専門用語や業界用語は避ける
老若男女、誰が読んでもわかる言葉で説明する
※使用する場合は「予後の解説」を設ける

☞わかりやすさを心がける
主語と述語の間を短く、読み手によって色々な解釈がされる文章にしない

☞数字を使う
具体的な情報を伝え、信ぴょう性とインパクトを高める

☞記事にするために必要な情報を入れる
・予定金額(売上、利益、総予算など)
・予定数量(販売数、生産量)
・時期(販売開始時期、生産開始時期、店頭入荷時期)
・市場・シェア
・商品スペック(容量、大きさ、重さ、サイズなど)
・商品金額(税込、オープンプライス、店頭実勢価格)

☞より分かりやすく、インパクトを求める
・過去のデータ、数字との比較
・従来品との比較(〇倍、〇%など)

書き終えたあとのチェックポイント

「リリースを書き終えた後には、間違い探しをするだけではなくて『これを書いたのは自分ではない』という気持ちで文章を読み返すクセをつけておくと、チェックポイントの項目が自然にクリアできるようになります!」

リリースでやってはいけないこと

リリースでやってはいけないことをふまえて、リリースの訂正や誤報について、どのようなことに注意をすれば良いのでしょうか。

一度発信したリリースでは、取り消しや内容の訂正は原則不可能です。リリースしたことが消滅した場合には、なくなったことを新しいリリースとして発信(再通知)する必要があります。ただし、訂正が度重なると、信用を失うことにつながるので注意しておきたいですね。プレスリリースは、企業の『正式』な文書である認識をもちましょう。」

メディアの特性を知る

メディアによって、大きく分けて3つの違いがあります。

① 読者・視聴者の層
「それぞれのコンテンツには媒体のコンセプトがあり、読者・視聴者がそれぞれ違います。」

② 企画のタイミングと公開時期
「新聞、雑誌、テレビ、WEBでは企画と公開のタイミングが違います。雑誌の場合、編集の企画は3か月前に仕込む。WEBは即時性に強いです。」

③編集方針の傾向、論調
「新聞、雑誌、テレビ、WEB。それぞれに異なった編集方針があるのも、違いのひとつです。自社のサービスや商品と、そのメディアとの相性を考えて検討しましょう。メディアに合わせてリリースを書き換えてもOKですよ!」

上記図にあるように、それぞれのメディアの特性を理解し、そのメディアに興味を持ってくれそうな内容で発信することが大切です。

【Q&A】プレスリリースのこんなことが知りたい!

プレスリリースのトレンドって?

「正しい情報をきちんと幅広く伝える点で、書く側としてはトレンドを意識することなく、企業としての正式な文書をつくることに専念して良いかと思います。ですが、メディアとして登録している記者の中で、オウンドメディアを運営している方が増えている傾向にあります。そのような方が、リリースをどう捉えるのかを考えなければなりません。そのためにも、今回伝えた通り『読み手によって色々な解釈がされる文章にしない』ことは常に意識してほしいです。記者側として都合の良い解釈でプレスリリースを配信されてしまうと、こちらの意図に反した広がり方になってしまう危険性が生じてしまうからです。」

スタートアップ向けの情報を届けるためにはどのような工夫が必要?

「スタートアップにおいての適切な媒体や工夫を考える前に、一度気になる媒体さんにアポイントを取ってお話を伺いに行くのも一つです。媒体の担当者との関係性を構築することで、メディアに取り上げてもらいやすくなることが期待できますよ。」

プレスリリースを適切に書くスキルを上げるためのコツは?

「プレスリリースは正解がない世界です。その中でも伝えられるとすれば『文章のダイエット』が大事だと考えています。伝えたいことを詰め込む文章になると、結局何が伝えたいのか? という文章になりがちなんですよね。私が実践してきたのは、できる限り書きなぐること。そしてそれを整理(ダイエット)するやり方でした。ただし、人によっては逆のやり方をする場合もあるので、自身でのやりやすさも考えながら進めてみてください。」

まとめ

最後に講師の海渡さんから一言!

「リリースを自分で書くことはもちろんですが、インキュベーションマネージャーやコミュニティマネージャーが、起業家の方から『リリースの書き方が分からなくて……』と相談を受ける場面があるかと思います。その際に、プレスリリースの基礎知識が身に付いていると、アドバイスもしやすくなりますよ!」

以上、海渡さんの「知っておいて損はない!プレスリリースの基礎知識」でした。

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