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起業支援施設で“サイバネティック・アバターの社会実証実験”やってみた!


みなさんは「ロボット」と聞いて、何を思い浮かべますか?
人型ロボットのペッパー? ロボット掃除機のルンバ? ペットロボットのアイボ? それとも猫型ロボットのドラえもん?
私たちの暮らしを便利かつ豊かにしてくれるロボットは、いまや日常生活にとけ込んでいる存在。

今回の特集では、内閣府が主導する「ムーンショット型研究開発事業(※1)」に則(のっと)り、サイバネティック・アバター(※2)×起業支援の可能性を探っていきます。

(※1)ムーンショット型研究開発事業について
超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究開発を推進する事業です。ムーンショット目標1、2、3、6、8、9については国立研究開発法人科学技術振興機構が担当しています。本発表は、ムーンショット目標1「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」における研究開発プロジェクト「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」の一環として実施される社会実証実験に関するものです。
(※2)サイバネティック・アバターとは?(Cybernetic Avatar、以後CAと略す)
「身代わりとしてのロボットや映像等を示すアバターに加えて、人の身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張するICT 技術やロボット技術を含む概念」で、Society 5.0 時代のサイバー・フィジカル空間で自由自在に活躍するものを目指しています。なお、サイバネティック・アバターは科学技術振興機構の登録商標(登録商標第6523764号)です。
(※1)(※2)の参考ホームページ

今回の主人公“Sota(ソータ)”をご紹介


言葉や身ぶり・手ぶりを使い、自然な対話を実現する操作型コミュニケーションCA。可愛らしいデザインですが、カメラやマイクにスピーカー、ネットワーク機能などを搭載した実力者!

そんなSotaが、ツクリエ運営のインキュベーション施設StartupSide Tokyo(旧:IGNIS FLAT)に来てくれました。

起業支援施設×Sotaの相性はいかに!?

Sotaのコミュニケーションには「言葉」「身ぶり」「手ぶり」があります。StartupSide Tokyoの実証実験では、このコミュニケーションを介して起業支援施設にかかわる「3つのお役目」に挑戦してもらいました。

1つめ:施設の窓口である「受付」
2つめ:起業家とのコミュニケーションでもある「壁打ち」
3つめ:起業や経営などに関する「相談」

StartupSide Tokyoスタッフは「Sotaを操作する役」と「利用者さん役」に分かれ、それぞれの立場から3つのお役目を体験します。

≪Sotaのモーションについて≫

Sotaにはパソコンから操作できる6種類の動きがあります。

うなずき/いやいや/右手振り/左手振り/両手振り/両手上げ下げ

以下、3つのモーションをご紹介

☝うなずき

 

☝両手振り

 

☝いやいや

これらのモーションをタイミングよく使いこなせるか否かが、コミュニケーション満足度の分かれ道!?  それを踏まえ、実験スタートです!

受付編

StartupSide Tokyoは扉を開けてすぐのところに受付カウンターがあります。カウンターにはスタッフが常駐していますが、今回はSotaのみ常駐。
はたしてスタッフがいなくても大丈夫なのか? 操作役と利用者役に分かれて実験しました。


テーブルトップサイズのSotaなので、受付カウンターに乗せても窮屈感なし。Sotaの首に「ご用件のある方は黒いボタンを押してください」と記載したストラップをかけ、用件があるときだけスタッフが対応する方式に。


利用者役はStartupSide Tokyoマネージャー北山さん。Sotaを遠隔操作するのは同じくスタッフの渡邉さん。
さっそく利用者役の北山さんがSotaに施設の使い方を聞くも、渡邉さん流のこなれた施設案内でなんら問題なく進みます。

さらに会議室の受付方法を聞くと、あらかじめカウンターに用意していた記入票をご案内され、会議室の受付完了!

◆操作役の渡邉さんに質問

良かった点は?
「カメラから相手の表情が見えるので、記入票を探している動作などから察知して『左側にございます』と誘導できました。あらかじめ受付カウンターに案内のポップや記入票などを用意しておくと、遠隔操作だけでこなせる受付業務が増えると思います。」

改善点はある?
「有料サービスをご案内する際、決済までSotaがこなせたら便利だと思いました。タブレットとつなげて説明画面を出したり、決済に進んでもらえたりすれば、受付業務がよりスムーズになると思います。」

◆利用者役の北山さんに質問

良かった点は?
「会話がスムーズにできるので、施設案内や会議室予約などは難なくできる印象でした。この範囲の業務であれば、現実的な運用が可能だと思います!」

改善点はある?
「いまのところSotaにできるのは音声案内だけなので、視覚的情報があればいいなと。受付カウンターには紙類がたくさんあり、そのなかから該当の書類を探すのも面倒なので、モニターなどにつなげて『この紙です』と見せてもらいたいです。」

壁打ち編

ビジネスシーンで使う「壁打ち」という言葉は、「人に話しを聞いてもらうこと」を意味します。
ちょっとした悩みや現状を聞いてほしいときに生まれるコミュニケーションのひとつで、起業・経営相談よりも短時間かつカジュアルな雰囲気が特徴。


アイデアがまとまらず、思考がフワフワな利用者役の菅さん。操作役の北山さんがSotaを介して会話を主導し、挨拶から天気の話題、そして本題である悩みを引き出していきます。
しかし利用者さん、頭のなかにある漠然としたアイデアを伝えることが難しく、ボールペンと紙を使い、絵に描いて説明することに。


カメラのフィルター越しでは、利用者さんの描いた絵は見えず……。
そこでボールペンからサインペンに替えて描きなおしてもらい、なんとか認識。

Sotaの可愛らしいデザインがそうさせるのか、利用者さんは終始リラックスした表情でした。

◆操作役の北山さんに質問

良かった点は?
「利用者さんはSotaを見て話し、操作側はカメラの映像を見て話すので、目線が合っている感じがして話しやすかったです。自分の顔が見られない点から、リアルの壁打ちよりプレッシャーはありませんでした。」

改善点はある?
「壁打ちでは、イメージ図や書類を見せてもらうことが多々あります。実験中にSotaのカメラからイメージ図を見せてもらいましたが、なんとなくしか分からなかったので、ここが改善されるとより良いです。ちなみにボールペンから太いサインペンに変えたら少し見えやすくなりました。カラーペンも黄色など色により見え難いのではと思います。」

◆利用者役の菅さんに質問

良かった点は?
「Sotaのビジュアルや動きが可愛くて、話しやすかったです。」

改善点はある?
「声はSotaからでなくスピーカーから流れてくるので、“Sotaと話している”という印象が薄かったです。実際にSotaから声が流れてくればいいのにと思いました。」

起業・経営相談編

StartupSide Tokyoにはアンバサダー(起業支援経験者、VCや仕業などの専門家、現役起業家)が常駐し、利用者さんの起業・経営のアドバイスをしています。
今回の実験では、Sota操作役としてスペシャルゲストにツクリエCEO鈴木英樹さんが登場!
副業に悩むスタッフ渡邉さんの“リアル相談”をやってもらいました。



メモ持参の本気120%で副業相談に挑む渡邉さん。その熱意に引き込まれて真剣にアドバイスするCEOだが、相談に没頭しすぎてSotaの身ぶり・手ぶり操作をすっかり忘れてしまう。



Sotaのモーション機能を活用することで「うなずき」や「手をふる」などの動きが加わり、利用者役の渡邉さんに笑顔が。
シリアスな起業・経営相談の場でも、Sotaの可愛いビジュアルやモーションに和んでいる様子。


相談を終えた最後の挨拶では、CEOが「じゃあねー!」と言いSotaが手をふる。それに「じゃあねー!」と答えて手をふり返すというやり取りが。
CEOと社員という距離感も、Sotaを介することで縮まったのかもしれません。

◆操作役のCEO鈴木さんに質問

良かった点は?
「人同士だと照れくさいことでも、Sotaを介せば照れずにできる点が良い。例えばオンライン会議の終了時、照れくさいので手をふることはないですが、Sotaだと積極的に手をふりたくなる。」

改善点はある?
「相談に夢中になるとSotaの動作を忘れてしまいます。反面、動作を意識すると話しに集中するのが難しい。操作側の表情や動作は自動的に感知してSotaが動くようにしてくれると、より良いと思いました。」

◆利用者役の渡邉さんに質問

良かった点は?
「相談者の顔が見えない分、Sotaのリアクションにめちゃくちゃ安心しました。僕が一方的に話しているときにうなずいてくれると、ちゃんと聞いてもらえている安心感があります。相談は問題なくできたと思います。」

改善点はある?
「顔が見えないからか、リアル相談では経験のない“独特の間(ま)”がありました。相談する側としてもその間にソワソワしてしまうので、Sotaに“まばたき”や“う~ん……と悩んでいる顔”といった表情があれば、ちょっと変わってくるのかなと思いました。」
 
以上が、起業支援施設にかかわる「3つのお役目」の実験結果でした。

なお、StartupSide Tokyoでのサイバネティック・アバター(略:CA)実験は現在進行形です。今後はSotaにプラスして新しいCAも来る予定なので、起業支援×CAの未来が気になる方はぜひStartupSide Tokyoに遊びに来てください!
 

2022年10月12日に、ムーンショット型研究開発制度の関係者が集うイベント「第3回 アバター技術社会実装情報交流会」が開催されました。
今回登場したStartupSide Tokyoマネージャーの北山さんも、インキュベーション施設でのアバター活用についてスピーチしています。

また、複数のCAによる多地点遠隔受付サービスの実証実験を、StartupSide Tokyo×ツクリエ運営のOggya’s梅田×Oggya’s御池で実施。
下記動画は、その様子を撮ったものになります。

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「ツクリエ」と「ムーンショット型研究開発事業」に関する概要
・株式会社ツクリエは、ムーンショット型研究開発事業(※1)の一環として実施されるサイバネティック・アバター(CA)(※2)の社会実証実験に協力いたします。この社会実証実験は、弊社が運営する複数のインキュベーションオフィスの受付にCAとして小型ロボットを設置し、弊社の事務所一箇所からそれら複数のCAを遠隔操作して受付業務を行えるかどうか検証します。これによって、CAの活用による人の生産性向上と社会参加促進への効果を検証することが目的です。
・この社会実証実験、および関連する研究開発は、内閣府が主導し、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が研究を推進するムーンショット型研究開発事業の研究開発プログラム「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」におけるプロジェクト「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」(プロジェクトマネージャー:石黒浩氏 大阪大学大学院基礎工学研究科 教授)の一環として実施されています。
・同プロジェクトの課題推進者である宮下敬宏氏(株式会社国際電気通信基礎技術研究所インタラクション科学研究所 所長)および内海章氏(株式会社国際電気通信基礎技術研究所インタラクション科学研究所 室長)が、株式会社ツクリエが運営するインキュベーションオフィスStartupSide Tokyo(旧:IGNIS FLAT 住所:東京都千代田区)、およびOgyaa’s梅田(住所:大阪市北区)、Ogyaa’s御池(住所:京都市中京区)において実施いたします。
・株式会社ツクリエは、同プロジェクトが目指すアバター共生社会に賛同し、同プロジェクトが設立したアバター共生社会企業コンソーシアムに情報会員として参加するとともに、この社会実証実験に対して場所の提供と遠隔操作者として協力し、弊社が運営するインキュベーションオフィスのCAを活用した新たな形態(遠隔インキュベーションオフィス)の実現可能性を模索します。

(※1)ムーンショット型研究開発事業
超高齢化社会や地球温暖化問題など重要な社会課題に対し、人々を魅了する野心的な目標(ムーンショット目標)を国が設定し、挑戦的な研究開発を推進する事業です。ムーンショット目標1、2、3、6、8、9については国立研究開発法人科学技術振興機構が担当しています。本発表は、ムーンショット目標1「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」における研究開発プロジェクト「誰もが自在に活躍できるアバター共生社会の実現」の一環として実施される社会実証実験に関するものです。
(※2)サイバネティック・アバター(Cybernetic Avatar、以後CA と略す)
「身代わりとしてのロボットや映像等を示すアバターに加えて、人の身体的能力、認知能力及び知覚能力を拡張するICT 技術やロボット技術を含む概念」で、Society 5.0 時代のサイバー・フィジカル空間で自由自在に活躍するものを目指しています。なお、サイバネティック・アバターは科学技術振興機構の登録商標(登録商標第6523764号)です。
(※1)(※2)の参考ホームページ