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《ツクリエの新人CM座談会》けっこう奥が深い仕事なんです! 起業家に一番身近なCMのやりがいを語ろう


起業支援施設を訪れると、まず対応してくれるのがコミュニティマネージャー(以下:CM)というスタッフ。
ツクリエでは施設を総合案内するコンシェルジュを兼務している場合もあり、施設利用者にとってファーストコンタクト以降も身近な相談役として、起業プロセスを伴走してくれる頼もしい存在です。

孤独になりがちな起業家に“寄り添う”ことをモットーに、人と人をつなげる場づくりに取り組むCMには、「さまざまな業種や職種はもちろん、人間そのものへの深い理解と洞察が必要」であるとツクリエの鈴木英樹代表は指摘します。

今回は、そんなCMの世界に飛び込んだばかりという、入社1年未満の社員4名による座談会をレポート。
仕事のやりがいや理想のCM像が語られるほか、「利用者さんに役立つ情報をつかむコツは?」といった新人あるあるな悩みに、先輩からの目からウロコなアドバイスもお届けします!

市川ひとみさん/2022年1月入社
現職:ファッション特化型起業支援施設「イデタチ東京」「ツムギバ」所属
前職:舞台衣装制作会社でのアシスタント業務
最近のハマりごと:断捨離からのフリマアプリ出品

田中千香子さん/2021年11月入社
現職:アニメやゲームなどコンテンツに特化した起業支援施設「東京コンテンツインキュベーションセンター(TCIC)」所属
前職:テレビ局でスポーツ中継画面のCG製作アシスタントとエンタメ系コンサル会社の広報アシスタントを兼業
最近のハマりごと:推しアイドルグループのライブやYouTubeチャンネル鑑賞

與川紗耶香さん/2021年11月入社
現職:東京都の起業支援施設「Startup Hub Tokyo 丸の内」所属
前職:障害福祉事業者に勤務。宣伝広報やマーケティングを担当
最近のハマりごと:ベランダでの家庭菜園

和田千咲さん/2022年2月入社
現職:山口県山口市の産業交流スペース「Megriba(メグリバ)」所属
前職:起業して無認可託児所を経営
最近のハマりごと:メイク研究とリモート飲み会

コロナ禍の最中、エンタメや福祉関連業界からツクリエに転職し、それぞれの現場でCMという新しい仕事に就いた4人。
どのような思いで入社を決めたのか。働きだして実感した、ツクリエという会社の特徴も含めて語ってもらうことから始めましょう!

新人4名と先輩CM2名を交えてトーク。ヨムリエ編集部も同席。

ツクリエに入社した経緯や社員になって感じたことは?

市川さん(以下:市)「私は舞台衣装の制作アシスタントをしていたのですが、労働環境の面でモヤモヤする部分があって。自分なりに働き方や法律について調べるうちに、会社経営にも興味が湧いてきたんです。

そんな中、転職サイトでツクリエの求人記事を目にして、“起業支援”という仕事をとおして経営の知識を学べるんじゃないかと。それにファッションの学校で勉強してきたので、アパレル業界の仕組みは多少分かります。その知識は、ツクリエのファッション関連の起業支援事業で生かせるのではないかと思って応募しました。

入社後は希望どおりの部署(イデタチ東京)へ。ツクリエ社内の雰囲気は、社員同士の関係がフラットだなって感じます。初めてのCM業務で分からないこともありますが、上司にも気兼ねせず質問できてアドバイスをいただけるので助かっています。」

田中(以下:田)「私はテレビ局でデジタル技術系の仕事をしながら、ツクリエのスタッフでもある方が新設されたエンタメ系コンサル会社で広報のお手伝いをしていました。そのご縁でツクリエという会社を知り、自由そうな社風に惹かれるように。ツクリエが展開している事業では、時代に合った働き方ができるんじゃないかとも思えました。

その頃の私は『将来、自分はこうなりたい』といった目標や理想像がなかったんですが、『ここで働いたら未知のことをたくさん吸収できて、将来への道筋も見えてくるんじゃないか』と感じて応募しました。

働いてみて分かったのは、実際に自由な雰囲気の会社だったこと。特に服装については自由度が高いですよね。ビビッドカラーの服で出社しても注意されたことがないですし、施設の入居者さんから『今日の服、かっこいいですね』と褒められたこともあります(笑)。」

與川さん(以下:與)「前職までは対人援助の現場で働きたくて、PR会社から障がい者福祉事業者に転職しました。でも、事業規模が大きくなるにつれて管理本部の業務を任されるようになって、支援現場に戻ることが難しくなってしまって。それを機に、現場で起業家のサポートができるツクリエへの転職を決めました。

現在の職場、Startup Hub Tokyo 丸の内(以下:スタハ) に配属された当初は、施設の受付業務だけでも覚えることがたくさんあって大変だったのですが、私のメンター以外の社員さんたちも『困っていることはある?』と声をかけてフォローしてくださるんです、しかも自然な感じで! こういう雰囲気って、すごくいいなと思いますね。」

和田さん(以下:和)「私は山口県在住で、もともと個人事業主として夜間専門の託児所を経営していました。コロナ禍の影響で営業ができなくなったことから、山口市で起業支援施設を運営するツクリエに入社しました。それまで“起業支援”という言葉を耳にしたことがなかったので、とても興味深かったですね。

私自身、起業しながらも、すごく孤独を感じていました。親からは先行きを心配して起業を反対されていましたし、事業への思いを理解してくれる人も少なくて。こうした経験をしてきた私だからこそ出来ることが、ツクリエの仕事にはあるんじゃないかと思ったんです。

そして今、県内の同じようなコワーキングスペースの方々と共同で何かできないか検討するために、あちこちミーティングして回っています。基本的に自由に行動させていただいていて、自分の意見も聞いてもらいやすい職場ですね。現場のアイデアや意見を上司に提案しやすい環境が、ツクリエにはあると感じています。」

CMになって「よかった」と思うこと、やりがいを感じる時は?

田「私は前職まで起業家さんと話をする機会がなかったので、今の職場(TCIC)に配属されてから半年以上、すごく刺激的で勉強になる日々を過ごしています。CMになった当初は緊張して、なかなか入居者さんたちに話しかけることができず悩むことも。

特に前任の方がコンテンツ関係に詳しいCMさんだったので、『私が後任として、ちゃんと務められるか』とプレッシャーも感じていました。

けれど、そんな私の様子を見た上司が『周囲は前任者と田中さんを比べていないし、田中さんらしいやり方で入居者さんたちに接していけばいいんじゃないかな』と励ましてくださって。そのとき肩の荷が下りたというか、『そうか、自分らしくやればいいか!』と思えたら緊張感が解けました(笑)。

最近では、自分から入居者さんに話しかけて世間話も出来るようになりました。入居者さんからも声をかけられるようになってきて、少しずつ信頼を得られているのかもしれないと、やりがいを感じているところです。」

TCICの入居者さんと談笑する田中さん(右上)

與「スタハは起業相談やイベント開催をメインにした施設なので、ツクリエの他の起業支援施設のようにCMが長期的にサポートできる入居タイプの利用者はいません。そうした環境でも、スタハで開催していた起業家育成プログラム“TOKYO-DOCAN(トーキョードカン)”にサブスタッフとして関わったことで、起業を目指す受講生たちと継続的な繋がりができているのは嬉しいです。

過去にこのプログラムを受講した卒業生たちは、講座終了後もコミュニティを維持していて、SNSでのやりとりだけでなく、リアルにみんなでご飯を食べに行くことも。そうした様子をCMとして見守れるのは嬉しいですし、時おり施設に遊びに来てくれる卒業生たちに、事業の進捗について話を聞かせてもらう時にもやりがいを感じます。」

市「私の場合は、IM(インキュベーションマネージャー)*面談に同席させてもらう時、起業家の方々の悩みや抱えている課題を知ることができるのが嬉しいというか、とても勉強になると感じています。

ふだんSNSなどで目にする起業家さんたちの姿はキラキラした部分が多いけれど、支援現場にいるとリアルな部分が見えてくる。そういう場に居合わせて、いろんな悩みを共有させてもらった上で、CMである私にどんなサポートができるだろうか、と考えることがあります。」
*IMの活動については「施設の枠を飛び出し起業家を応援するIMの活動とは!?」でご紹介しています。

入居者のIM面談に同席する市川さん(中央)

和「CMをやっていると『こんな身近にも、夢をもって頑張っている人たちがたくさんいるんだ!』と刺激を受けて嬉しくなりますし、『私も頑張ろう!』と気合が入ります。

ただ、市川さんがおっしゃったように、頑張っている起業家さんたちにも、それぞれ悩みがあることを知った上で必要な支援を考えていくのは、この仕事ならではの“やりがい”だと思います。

起業経験がある私にとっては、利用者さんたちの孤独や悩みが分かるぶん親近感が湧きますが、単に感情的に入り込みすぎず、CMとして適度な距離感を保ちながら“寄り添う”ということを追求していきたいです。」

ここまで新人CM座談会をお届けしました。起業支援施設を訪れる起業家にとって、最も身近で影響力も大きいCMというお仕事。
個性やバックグラウンドの違う4人が、それぞれのやり方でツクリエのミッションである“起業家に寄り添う”ことに挑戦し続ける姿が楽しみです!

それぞれバックボーンやCMへの思いを語り、共感する4人。座談会が始まった頃は緊張した面持ちでしたが、だんだんとリラックスした笑顔に!

教えて、先輩!CMスキルアップのためのQ&A

ここからは新人CMたちが頼りにしている先輩たちにもお話を伺います。新人あるあるな悩みごとに、経験豊富な先輩2人はどのようなアドバイスをくれるのでしょうか?

太田尚緒美さん/2016年6月入社
現職:創業支援施設「六郷BASE」所属
前職:広告代理店にグラフィックデザイナーとして勤務
最近のハマりごと:育成シミュレーションゲームアプリ「ウマ娘」、公園でのピクニック

平井朝子さん/2019年6月入社
現職:主に福島県南相馬市での事務所立ち上げ業務
前職:コワーキングスペース運営
最近のハマりごと:登山、旅行

Q.もっと気軽に利用者さんたちと会話できるよう意識していることはありますか?
A.太田さん(以下:太)「利用者さん一人ひとり、以前した会話の内容をできるだけ覚えておくようにしていますね。次に会った時に『あの時の案件、その後どうなりましたか?』といった感じで、挨拶しながら進捗状況を確認していくと、新しい情報をいただけますから。

起業家の方々は基本忙しいので、サーッと通り過ぎていかれることもありますが、それでもあいさつ程度の声かけは必ずするようにしていますね。」

平井さん(以下:平)「起業家さんは事業が成長されるほど忙しくなって、CMと話をする機会が減っていきがちかもしれませんね。なので、つながりを保っていきたい起業家さんたちのことを、私は意識的にイメージするようにしています。すると不思議なことに、彼らが事業展開している業界の情報が入ってくるようになる。

その中から役に立ちそうな情報を彼らのSNSアカウントにDMで送っておくと、3件に1件くらいはヒットして何かしら新しい動きが始まることも。仕事以外でも、プライベートな趣味や好きな食べ物の話題でやりとりを続けて、一個人として親交を深めることも意識しています。」

Q.利用者さんに役立つ情報をつかむコツってありますか?
A.太「まずは定期的に行っている入居者面談で出てきた利用者さんの悩みや課題のキーワードを見直してみる。その上で関連する分野にアンテナを張りながら各メディアに目を通してみる、という感じです。

たとえば、脱炭素について話していた人がいたら、こちらも意識していると関連情報が目につくようになってくるものなので。あと、自分で調べてもイマイチ分からない時は人に訊くこと。ふだんから“ゲームのことなら、あの人”みたいな得意分野がある社員のことも調べておいて、遠慮せずに訊きにいったらいいと思いますよ。

誰に質問したらいいか分からない時は、上司や先輩に『こういう質問は誰に訊いたらいいですかね?』と率直に訊ねるのもアリだと思います。」

平「私は前職でつながっていた人など、社外の人脈にコンタクトして情報収集することも多いです。けれど、新人のうちから社外にまでリサーチの範囲を広げるのはハードルが高いと思うので、まずはある程度自分で考えたり調べたりしてから、関連分野に詳しそうな人に訊いたり、同僚に話をしたりしてみる。

そういうプロセスをたどっていくうちに、社員同士のつながりがどんどん広がっていくんですよね。宝探しみたいに、いろんな人がひとつのテーマをめぐって答えを探してくれるみたいな(笑)。これってすごくツクリエらしいなって思います。」

Q.施設運営や起業家マッチング支援のほか、イベントプランニングも担っているCM。企画したイベントへの登壇を依頼した講師候補の方々に断られ続ける事態が! なかなか講師が見つからない時、どうしていますか?
A.平「私も2人くらい続けて講師依頼を断られたことはあるので、あまり落ち込まないで(笑)。とはいえ、断られるのには、それなりの理由があるはずなので、客観的な視点から企画内容を見直すようにしています

ツクリエは何事も自由にチャレンジさせてもらえる社風なので、いろんなアイデアをカタチにする上でのハードルは、あえて高くないと思います。なので、私は経験上、講師依頼を断られた時は、自分の企画力を問われていると判断して『本当は何がしたいんだろう?』と自問しながら内容を練り直しますね。その上で、まわりのCM仲間に相談して意見を聞くこともよくあります。

ただ、講師選びで注意したい点がひとつ。いろんな人の意見を聞いて、市場ニーズも考えて企画を立てる時に、あまりにもお客さま目線が強すぎると、立案者である自分自身が面白くなくなってきてモチベーションが下がってしまうことがあるんです。そういう時、最終的には“私が今、会いたい人”に講師を頼むようにしていて、あまりハズレはありません。」

太「もしかしたら講師依頼の仕方に課題があるのかもしれません。私自身、かつて同僚のCMからもらったアドバイスをもとに実践していることなのですが、まず『なぜ、その人に講師をお願いしたいのか』といった依頼理由を自分の中でハッキリさせ、その旨を相手にしっかり伝えることが大事だと思います。

『自分がその人のファンだから』、『以前登壇していたイベントでのコメントに共感したから』、『自分が支援している起業家たちが注目している人だから』といった理由を率直に依頼の文言に込めてみる。こちらの熱量が伝われば、依頼された側の心が動くこともあるでしょう。そこまで頑張っても断られた場合は、ご縁がなかったんだと気持ちを切り替え次に進むのが“吉”です!」

これが私たちの理想です! 新人4名が目指すCM像とは?

実体験に基づく先輩CMからのアドバイスに、感心もひとしおだった新人CMのみなさん。ますます意欲も高まった彼女たちが「こうなりたい!」と思うCM像と、その理由を最後に聞いてみましょう!


田中千香子さん【気軽に話しやすいCM】
そのココロは?☞「スタートアップにとってトラブルはつきものですが、目の前の業務などに追われて、誰かに悩みを相談できない方は多いのではないかと思います。そのような時、まずCMに話してみようと思っていただけるような存在になりたいです。日常会話や表情などから、入居者のちょっとした変化にも一番に気づいて寄り添っていけるように頑張ります!」

與川紗耶香さん【一歩を後押しできるCM】
そのココロは?☞「スタハは漠然と起業を考え始めた方から具体的に起業準備をしている方まで、幅広い人たちが利用しています。そうした方々の不安やモヤモヤした思いを和らげられるよう話をうかがったり、もう一歩先に進む後押しになるようなイベントの企画をしたり。その上で『サービスを利用したいな』と思ってもらえるような場づくりや情報発信を、利用者さんはもちろん自分も楽しくできればと思います。」


市川ひとみさん【きっかけを作れるCM】
そのココロは?☞「これまで起業家さんと向き合う中で、事業を進めていくためのきっかけを提供することが、CMの重要な役割だと感じるようになったから。事業に役立つ情報の共有、ニーズや困りごとを汲み取ったイベントの企画、進捗を気軽に話せる存在になることを意識しながら、入居者さんたちのプラスになって事業を前進させられるきっかけ作りを頑張ります!」

和田千咲さん【アンパンマンのようなCM】
そのココロは?☞「みんなに愛され、頼られ、信頼されているアンパンマンは、私の理想のCM像と重なります。何といっても、頼られたら絶対に助ける姿が、とてもかっこいい!誰もが幼少期に親しんだアニメキャラですが、世代を超えて愛される、誰かの心に残り続けるアンパンマンのような存在に、私もCMとしてなっていきたいと思います。」

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