ヨムリエ

『起業ってなに?』をよみとくWebマガジン

クリエイター必見! 知識ゼロでもよくわかるNFT入門


起業やビジネスに役立つ知識を“サクッ!”と学べる「ヨムリエの学び舎」。

このシリーズでは、ツクリエ社員が研修やイベントなどで登壇した内容を“ヨムリエのテイスト”に味へんしてお届けします。

第2回目の授業は、デジタルアートが75億円で落札されたニュースを筆頭に注目を集め続けている「NFT」。その実体を解説していきます!

講師紹介

川野 正雄さん
所属:東京都直営の入居型創業支援施設「東京コンテンツインキュベーションセンター(以下略:TCIC)」のインキュベーションマネージャー

授業の予備知識

今回ご紹介する授業の内容は、2022年9月に開催したツクリエの社内セミナー「私的NFT講座」から抜粋したもの。
講師・川野さん流の解釈をまとめたことから、タイトルに「私的」がついています。

第1回目の授業ではNFTの予備知識として「Web3.0の概念」をお伝えしました。

未読の方は「ズバリ! Web3.0とはなにか?」記事をご覧いただけると、よりNFTの世界観がつかめるかもしれません。

まず、FTとはなにか?

FTとは「Fungible Token(ファンジブルトークン)」の略で、日本語では「だいたいせいトークン」と呼ばれています。FTは代替可能な資産。同じ価値を持つ資産が存在すればFTとなります

リアルの概念でいえば現金が挙げられ、この概念はデジタル上だと暗号資産(仮想通貨)になります。

暗号資産(仮想通貨)とはインターネットを通じて通貨のように取引できるデータ資産のことで、その代表格はビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)。暗号資産(仮想通貨)は交換ができる、すなわち経済取引ができることから「Web3.0時代の貨幣価値」といえます。

ズバリ、NFTとはなにか?

NFTとは「Non-Fungible Token(ノンファンジブルトークン)」の略で、日本語では「非代替性トークン」と呼ばれています。シンプルに言えば代替不可能な資産。この世に唯一無二の複製できない資産のことをNFTといいます

リアルの概念でいえば「サイン入り色紙」や「チケット」などが挙げられ、この概念をデジタル上で実現したのがNFTです。デジタルコンテンツに価値をつけ、ブロックチェーン(*)技術が所有する権利を保証することで「デジタルデータの資産化」が実現。

(*)ブロックチェーン……情報を記録するデータベース技術の一種。ブロックという単位でデータを管理し、それをチェーン(鎖)のように連結してデータを保管する技術のこと。

NFT=資産価値+ポップカルチャー

「かなり個人的な意見が入っています」という、現時点での川野流NFT解釈。

それは、「NFTとは、資産価値とポップカルチャーがミックスされたもの」という解釈で、「デジタルテクノロジーと創造性が融合したテックカルチャーが、NFTではないか」といいます。

そんな川野さんの解釈を掘り下げていきます!


①の解説
「NFTはいま、コンテンツのデジタル資産化により新しく生まれたオリジナルコンテンツが主流です。たとえば、PFP(プロフィール画像)、デジタルアート作品、GameFi(*)が挙げられ、どれもNFT市場で人気。」

(*)GameFi(ゲーミファイ)……GameとFinance(金融)をかけ合わせた造語。ゲーム内でプレイヤーに金銭的インセンティブを受け取ることができるブロックチェーンゲームのことを指し、稼げるゲーム(Play to Earn)として話題を呼んでいる。

②の解説
「NFTがなぜこんなにも盛り上がっているのか? 僕が思うに、投資というファイナンシャル行為にコンテンツを所有したいというエモーショナルな所有欲が融合して熱狂を生んでいるのではないかと。このエモさが、NFTの重要なエッセンスになっていると思います。」

③の解説
「NFTの特徴として、“二次流通以降の取引からもクリエイターに収益が還元される”という点が挙げられます。つまり、二次流通市場でNFTが売買されるたびにクリエイターは一定の収益をあげることができるようになります。」

④の解説
「新しくNFTから生まれたIP(知的財産)がスターになるという時代。しかし、匿名性が強いので『これはオレがつくった●●だぞ!』と主張する世界じゃない、というのもひとつの特徴。日本でも既存著名IPのNFT化は、現時点では成功事例が少ないです。」

NFTによるパラダイムシフト

パラダイムシフトとは、その時代に当然と考えられていた物の見方や考え方が劇的に変化することをいいます。

それでは一体、NFTによってどんなパラダイムシフトが起こるのか? 分野毎に解説していきます。

☞テクノロジー
「ブロックチェーンに書き込まれるとそのデータは未来永劫消えないので、持続的な資産となります。ブロックチェーンによって証明されるデジタルコンテンツの恒久的な資産化が、テクノロジー分野のパラダイムシフト。」

☞商流
「販売できるので所有権は移りますが、二次流通以降まで大きなマーケットになっています。輸出入も国境も関税もない自由市場。決済したらその場ですぐ権利が移動するスピーディな世界。」

☞経済
「経済もWeb3.0の経済概念へと移行していきます。」
※Web3.0の経済概念については、「ズバリ! Web3.0とはなにか?」で詳しく解説しています。

☞著作権
“知的所有権を解放する”という考え方が主流になってきています。これにより二次創作の自由化やCC0(*)の概念が導入。CC0については、のちほど詳しく説明します。」

(*)CC0……知的所有権を0にしようとする活動のこと。

☞階層
「資本主義は、国家やGAFAM、大企業などの“中央集権型”で構成されていますが、それが自律分散型へシフトします。
また、“DAO(分散型自律組織)”というコミュニティ要素も重要。DAOがうまくいかないとNFTもうまくいかない構造ができているので、そういう意味では、人と人とのコミュニケーションが重要なキーワードになってきます。」

☞クリエイターオリエンテッド
「昔の画家は、絵を描いて画商に売ると、最初に売った画廊からはお金をもらえますが、それがどんどん転売されて値段が高くなっても、画家にはお金が入ってきませんでした。
しかしNFTを使うことでオリジネーターへ未来永劫に利益が還元される仕組みがつくれます。」

CC0について

前述、著作権のところで触れたCC0について解説していきます。

まずCC0とは「Creative Commons 0」の略であり、読み方は「シー・シー・ゼロ」になります。CC0は知的所有権を0にしようという活動のことで、これが「著作権の概念」を大きく変えるものになります。

以下、権利概念の変化でおこるだろうパラダイムシフトを「権利視点」と「可能性視点」に分けてご紹介。

~権利視点のパラダイムシフト~

☞(NFT市場では)権利所有者が二次利用権を解放!

☞新作にもパブリックドメイン(*)を適用。知的所有権0の世界!

 (*)パブリックドメイン……知的創作物についての、著作権をはじめとする知的財産権が発生していない、誰でも利用できる状態のこと。

「電子書籍で0円、10円などの価格で販売してる昔の文学作品は、すでにパブリックドメインになっているもの。音楽でいうならモーツァルトなんかもパブリックドメインです。これを“昔の作品”ではなく“新作にも適用していこう!”というのが知的所有権0の世界。」

~可能性視点のパラダイムシフト~

☞既得権益者がいるコンテンツは参入しにくい!
「前述したパブリックドメインの適用で、いま様々な問題が起きています。“すでに権利を持っている人たちは権利を解放するのか?”など、難しい課題に直面しています。」

☞二次販売以降もオリジネーターには一定のリターンが支払われる!

☞誰もが開発者にも所有者にもなれる!
「Web2.0時代(*)では、“誰もがコンテンツを開発することができる”という大きな進化がありました。NFTはこれにくわえ、NFTを購入することで“誰もがコンテンツの所有者(オーナー)にもなれる”と、さらに進化しています。所有者になれば、そこから株式投資のようにビジネスもできます。」

(*)Web2.0時代……シンプルにいえばスマホやSNSの時代(下記画像参照)。詳細は「ズバリ! Web3.0とはなにか?」で解説しています。

☞UGC(*1)からPUGC(*2)へ!

(*1)UGC(User Generated Contents)……一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツの総称
(*2)PUGC(Professional User Generated Contents)……上記(*1)の「UGC」と、プロが制作・生成したコンテンツ「PGC」を掛け合わせたもの。要はセミプロ。

「TikTokではいま、レベルの低い動画は淘汰され質の高いものが求められています。YouTubeやTikTokなどで発信される“動画のクオリティ意識”が変化していることから、これからはアマチュアとプロの中間くらいの人が成功のチャンス。」

☞二次流通、二次創作の自由化

まだまだ発展途上のNFT。今後の課題とは……?

ものすごいスピードで進化しているNFTですが、まだまだ正解の見えない世界でもあります。
ここからは、川野さんの考えるNFTの課題を「グローバル」と「日本」の視点に分けてピックアップ!


①の補足
「大手取引所である“FTXトレーディング”の破綻など、仮想通貨周辺のトラブルが起きており、市場全体が不安定になっているのが現状。世界的にマネーロンダリングの監視が強くなり、金融機関の仮想通貨取引に対する視点は厳しくなっています。」

②の補足
「出版社の方いわく、著作権とNFTはすごく相性が悪いのだとか。本の出版権は著者から許諾されるため、出版社は著作権を持っていません。よって、出版社はNFTをつくれない。」

③の補足
「右クリック主義とは、『画像なんて右クリックしたら保存できるんだから高いお金を出してNFTを買わなくてもいいじゃん』という考え方のこと。NFTネガティブ派。」

⑥の補足
「ガス代とは、NFTの取引にかかる手数料のこと。この高い手数料がなかなか解決されません。」


①の補足
「仮想通貨の法整備は、政府もいろいろやろうとしていますが、日本は非常に遅れている状況。日本では無体物の所有権が法的に担保されていないので、NFTの法的価値に関する議論が起きています。」

②の補足
「ウォレットを直訳すると“財布”の意味ですが、暗号資産でのウォレットとは“暗号資産専用の財布”を指し、暗号資産を保管する場所を意味しています。このウォレットを保有し、実際にNFTを売買しているのは16,000人くらいと推定されています。実は小さいマーケットなんです。」

③の補足
「NFTといいながらも仮想通貨ではない取引をするといった、独自のマーケットプレスが乱立しています。」

④の補足
「現実的な問題として、今後二次利用の許容範囲について、様々な検討が必要になります。」

⑤の補足
「全体的なITリテラシー問題とインフラ整備はまだまだ。このままでは、日本のNFTはガラパゴス化してしまいます。」

まとめ&2023年の課題について

「2022年は、Web3.0/NFT元年といっても過言ではありません。社会的に認知され、多くのプロジェクトが世界中で生まれました。
しかし仮想通貨の相場や取引所の破綻、マーケットの乱高下により、2022年後半はNFT相場が下がり、年の後半から冬の時期に入りました。

2023年は、生じた多くの課題を解決しながら、さらにステージが上がっていく年になるのではないかと推察しています。2023年に想定される動きとしては、“Web3.0/NFTとフィジカルな世界”の融合があります。ぜひその視点でもご注目ください。」

以上が、川野さんによる社内セミナー「私的NFT講座」のNFT編でした。
川野さんいわく、「まだまだ正解がなく、それでいて進化のスピードがものすごく速い」というNFTの世界。今後、ヨムリエでも追っていきます!

NFTイベントのお知らせ

ツクリエ運営のコワーキングスペース「StartupSide Tokyo(旧IGNIS FLAT)」にてNFTイベントを開催! NFTの基礎知識から最新のトレンドまでわかりやすくご紹介します。

さらにこのイベントでは、講師が参加者と一緒にNFTアートを審査して購入するという催しが! 

実際にNFTアートを購入するという実例が見られるので、NFTに興味はあるけど実態がよくわからないという方にオススメです!

お申し込みはコチラ
※申し込み締め切り日時:2023年 1月24日(水) 17:00

<おすすめの記事>
ズバリ! Web3.0とはなにか?