起業支援ラボ

incubation Lab

Theme

起業家教育

【イベントレポート】「未来を切り拓く起業家教育の価値とは」 不確実性の時代だからこそ、子どもたちに生きる力を

社会の不確実性は高まるばかり。そんな中、子どもたちに起業家精神を教える役割は何でしょうか?
起業支援を主軸に事業を展開する株式会社ツクリエと、ゲーム制作のノウハウを生かして教材を開発する株式会社キッズプロジェクトが、小学生以下から大学生を対象にした起業家教育プロジェクト「ミライクルラボ」を2023年に発足。
「なぜ今、起業家教育か?」「小学生のうちから起業家教育は必要?」「起業家教育の可能性は?」といったテーマで、株式会社キッズプロジェクト代表・小林一博氏と株式会社ツクリエ代表・鈴木英樹による対談を実施。進行はツクリエの渡邉涼太が務めました。

小林 一博

株式会社キッズプロジェクト 代表取締役

食品メーカーにて、人事、広報、開発、営業の業務に従事。全国営業の責任者を経験。 2013年㈱エンジンズへ所属し、ゲーム・エンタメコンテンツのプランナー及びディレクターを務める。 社内ベンチャー事業として大学時代に計画したこども向け事業「キップロジェクト」をスタート。 「難しいことをカンタンに・楽しいことをもっとたのしく」をキーワードにアナログやデジタル問わず様々なサービス開発を行っている。

鈴木 英樹

株式会社ツクリエ 代表取締役

商社、コンサル会社を経て、2002年大阪市の起業支援施設に勤務、以後インキュベーション業務に係る。
2006年テクノロジーシードインキュベーション(株)(TSI)入社、2009年TSI取締役、 2015年(株)ツクリエ設立、代表取締役就任(現任)。
ファンド運営、投資育成、起業施設運営を多数手がけるとともに、自らもベンチャー立ち上げと経営を複数経験。

なぜ今、起業家教育に挑戦?

小林 株式会社キッズプロジェクトは、もともとゲーム会社の社内ベンチャーから立ち上がった会社のため、エンターテインメントをベースにした展開をしています。将来、何をやりたいのかわからない子たちに、こんな選択肢もある、こんな可能性もあると、いろいろなボールを投げるため、さまざまなコンテンツを考えています。
とはいえ、スーパーマンを生み出したいわけではないんです。その子らが大人になった時、僕たちが提供するサービスがきっかけの一つになればと思い、教育や体験に落とし込む取り組みを心がけて事業を展開しています。

右から株式会社キッズプロジェクト代表・小林一博氏、株式会社ツクリエ代表・鈴木英樹
右から株式会社キッズプロジェクト代表・小林一博氏、株式会社ツクリエ代表・鈴木英樹

渡邉 起業支援のツクリエが、なぜ、今、起業家教育なのですか?
鈴木 ツクリエで、子ども向けの起業家事業をずっとやりたいと思っていました。理由は、起業家を育成するための教育制度が、日本は十分ではないからです。ツクリエは起業家事業のノウハウはありますが、子ども向け、特に小学生以下は未開拓領域。ノウハウが万全ではなかったのです。そこで以前から気になっていた小林社長に声をかけました。
渡邉 以前からお知り合いだったのですか?
鈴木 はい。初めて会ったのは14~5年前。当時、小林社長は大阪で有名なゲーム開発会社の社員でしたが、将来は子ども向けの会社をやりたいと話されていました。
渡邉 まさに起業家アンテナにひっかかったということですね。
小林 実は、お話をいただいてから初めてアントレプレナーシップ(起業家精神)の重要性について知りました。子どもたちの未来を考えた時、起業家精神を身につけていれば、選択肢が広がります。

株式会社ツクリエ代表・鈴木英樹
株式会社ツクリエ代表・鈴木英樹

小学生のうちから起業家教育が必要?

渡邉 ミライクルラボという名前には、どんな意味があるのですか?
小林 プロジェクトの目的は、子どもたちの未来の選択肢を増やす一翼を担うこと。ミライクルは、未来が来るよ、という語呂合わせ。さらに研究室の意味を持つ“ラボ”を加えました。これは、子どもたちに何かを用意してあげるのではなく、大人やスタッフも含めてみんなで一緒に考える場所という意味を込めています。
渡邉 小学生を対象にした理由は何でしょうか?
鈴木 起業支援の仕事をして感じるのは、リスクをとってチャレンジする人は、まだまだ少ないということです。若い人ほど、失敗が怖いし、失敗したくない思いが強い。起業に無関心な日本人の割合は、世界と比べて群を抜いて高いという統計もあります。「どうせやりたいことはできない」「自分なんかじゃ世界は変えられない」という諦めムードがある。これは、起業家精神が育っていない証拠です。やりたいことができる、自分が社会を変えられると信じられる人を増やすにはどうしたらいいか?と考えた時、小学生のうちから起業家教育に触れる必要性があると考えました。
小林 本来教育は、子どもたちが将来、社会で生きていくために必要な力を育むことです。社会情勢が大きく変化している今こそ、早いうちから起業家教育で自分の夢や目標に挑戦する力を育むことは、大変意義のあることだと思います。

株式会社キッズプロジェクト代表・小林一博氏
株式会社キッズプロジェクト代表・小林一博氏

渡邉 起業すること自体の未来は、どのように考えていますか?
鈴木 一人でも多く起業して、一人でも多くの人が幸せになっていくことを目指していますが、そのためにはまず、起業という概念のハードルを下げること。失敗したらまたチャレンジすればいいというぐらいにまで、起業がカジュアルになるのが理想です。
渡邉 キッズプロジェクトでは、食育などをワークショップのテーマとして扱っていますが、起業はテーマとして違うかな? と思ったことはありませんか?
小林 たとえばサッカーを経験した野球選手と、ドッジボールを経験した野球選手と、野球だけをつきつめた野球選手がいたとして、技術だけなら野球をつきつめた人が一番かもしれないですが、人に教える場合は、サッカーやドッジボールを経験していたほうが広がりがあるし、面白く教えられるのでは?というのが持論です。食育でも起業でも、ひきだしの数が増えれば、子どもたちの未来は豊かになると思います。

株式会社ツクリエ コミュニティマネージャー/「ミライクルラボ」代表・渡邉涼太
株式会社ツクリエ コミュニティマネージャー/「ミライクルラボ」代表・渡邉涼太

起業家教育の可能性は?

渡邉 ミライクルラボでの発見はありましたか?
鈴木 子どもの自由でストレートな考え方に改めて驚きました。大人は、これまで生きてきた自分の価値観で物を見るし、正解を出そうとして自由な発想がしにくい。その点、子どもは好奇心のおもむくままに考える。その発想力には感嘆しました。ミライクルラボで起業家精神を身につけた子が、将来、世界に名を轟かせるようなベンチャーを立ち上げてくれたらうれしいです。
小林 僕がつくづくミライクルラボで感じるのは、大人は子どもにガチャガチャ言わず、アドバイスをし過ぎないほうがいいということ。子どもたちは得意なこともあれば、不得意で集中力が続かない時もあります。はっきりしているのは、親が思っている以上に、子どもは成長しているということです。
渡邉 地域エリアによる違いはありますか?
小林 地域性はありますね。住んでいる環境や自治体の取り組み方に影響されることはあります。
渡邉 自治体と連携して、起業家教育が地域の教育力向上に一役買う可能性もありますね。

ミライクルラボの今後は?

渡邉 保護者から、幼稚園児の参加はできるか質問されますが、今後は?
鈴木 スタート時、対象年齢は小学校高学年くらいを想定していましたが、それ自体バイアスにとらわれた考えでした。将来的には幼稚園児向けのラボも開催したいですね。
渡邉 親子で参加することについては、どのように考えていますか?
小林 親子ぐるみのほうが、親が驚くような発見があり、楽しいと思います。僕自身が娘と参加した際、“えっ、そんなこと考えているのか!”と驚き、意外な娘の一面を見られる機会になりました。そういった一面を親が認めてほめてあげれば、子どもの自信につながります。
鈴木 家族の団らんで話題になるような教育プランは他にないのでは?と自負しています。家族の話題に自然と上るのも、起業家教育の大切な要素ですね。
小林 大人のほうが上手な、例えば工作などの場合、親が手伝ってしまいがちなんです。でも、起業は、お父さんもお母さんも経験したことがない人が多く、こうしたほうがいいよと強く言えないわけです。親も一緒に考える良いきっかけになります。
渡邉 今後、コラボしたい人や会社はありますか?
小林 商店街とタッグを組んでみたいですね。ワークショップの後に、参加した子ども同士のつながりが生まれるプログラムも興味があります。文化が違う海外でもやってみたいです。
鈴木 小学生を中学生が教え、中学生を高校生が教える、循環するような仕組みをつくりたい。ファシリテーターに頼らない、自走する場所づくりが理想です。

※本イベントは、2023年3月29日「未来を切り拓く起業家教育の価値とは~社長対談!キッズコンテンツ開発×起業創業支援~」として実施しました。

この記事をFacebookでシェアする この記事をTwitterでシェアする
起業支援ラボ・起業支援事業についてのご相談・お問い合わせはこちら