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職業としての起業支援家
公開日:2023.04.21
「起業品質」とは、起業支援会社であるツクリエが独自に打ち出している概念である。
これは、地域や国という社会における起業の品質を表すものだ。
したがって、1人ひとりの起業家、1つひとつの起業事例の良し悪しや品質を表すものではない。
起業品質は、「起業率」、「継続率」、「拡大率」という3つの指標から成ると定義している。
この起業品質、国際比較すると日本はどうか。
2020年の中小企業白書によれば、開業率・廃業率ともに日本は相当低水準だ。
2020年版 中小企業白書 第1-3-9図 開廃業率の国際比較
開業率と廃業率はリンクする。
つまり、開業率が高くなれば廃業率も高くなるのである。
開業率を上げながら存続率を上げる(廃業率を下げる)ことは矛盾しているようにみえるが、そうではない。
廃業率は、「起業した会社の廃業」より、主に「既存企業の廃業」が多く影響するからだ。
開業企業、存続企業、廃業企業を労働生産性の観点からみてみる。
廃業企業は開業企業、存続企業に比べて中央値で約3割低い。
さらに各パーセンタイルを比較すると、上位10%の生産性は開業企業が存続企業の生産性を大きく上回っている。
経済活性化には、生産性の低い企業が市場から退出し、生産性の高い企業がどんどん生まれる、という企業の新陳代謝が必要だ。
起業支援の目的は開業して成功することであり、開業は通過点でしかない。
開業(起業)を支援し、継続や成長を支援することが企業の新陳代謝を促すことにつながる。
起業支援会社として、廃業率は高くとも社会全体の経済が発展していくことに貢献すべきと思っている。
2020年版 中小企業白書 第1-3-12図 存続企業・開業企業・廃業企業の労働生産性(パーセンタイル)
起業とはプライベートな行為である。
事業は価値提供、雇用創出や納税といった社会的な意義を成すが、起業の動機は極めて私的なことが多い。
自分や家族の個人的な事情や、生まれ育った環境などが大きく影響する。
起業という行為は、合理的に損得で考えるとやめておいた方がいいかもしれない。
おそらく当初の報酬は低いし仕事はしんどい。
では、なぜ起業するのか。
その人がやりたくてどうしようもないから、やらざるをえないからだ。
そこに強烈な原体験に基づいた動機があるからだ。
だから、起業支援は単なるビジネスサポートだけでなく、人として向き合っていく、寄り添っていくことが重要だ。
さて、ではなぜ今、起業品質なのか。
起業品質という言葉は、弊社のミッション、ビジョン、バリューを見直しているときに生まれた。
弊社は起業支援サービスを展開する会社だ。
スタッフは1人ひとりの起業家に寄り添いながら、起業家の目標達成のため全力で支援している。
1つひとつの起業支援というミクロな行為がマクロ的に、社会にどんな意義や価値をもたらすか、を考えていたとき出てきた言葉が「起業品質」だ。
東京商工リサーチによると、2021年の新規法人設立数は14万4,622社。
データとして、数値としてマクロ的にとらえるだけでは見えない、動機やドラマがこの一社一社にはあるはずだ。
そういう想像力を働かせて、ミクロ的に起業支援に取り組むことが重要だ。
ミクロとマクロ。起業支援会社として起業家に寄り添いながら、社会全体を考える。
「グローバルで考えてローカルに行動するべき」はソニーの盛田昭夫氏の口癖だったとのこと。
これと似た感覚だ。
起業支援も「社会全体で考えて、目の前の起業家に寄り添う」ということだ。
我々、起業支援会社の成果はマクロ的には起業品質で問われ、ミクロ的には目の前の起業家の成否で問われるべきである。