起業支援ラボ

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職業としての起業支援家

【起業をめぐる哲学】「起業相談とコロナ禍」 若手ほど相談できる人がいない 開業率を上げるためにやるべきこととは?

起業支援のうち、相談のニーズが最も高い一方、「周囲に相談できる相手がいない」という現実がある。そのギャップを埋めるべく、オンライン起業相談と創業支援機関の利用が有効だ。起業支援の手がかりをお届けする。

鈴木 英樹

株式会社ツクリエ 代表取締役

商社、コンサル会社を経て、2002年大阪市の起業支援施設に勤務、以後インキュベーション業務に係る。
2006年テクノロジーシードインキュベーション(株)(TSI)入社、2009年TSI取締役、 2015年(株)ツクリエ設立、代表取締役就任(現任)。
ファンド運営、投資育成、起業施設運営を多数手がけるとともに、自らもベンチャー立ち上げと経営を複数経験。

周囲に相談できる人がいない

今や当たり前だが、コロナ以前はオンラインで起業相談にのることはほぼなかった。Face to Faceに意味があると思っていたが、やってみると結構オンラインでできてしまう。

2020年のとある春の日、大阪にあるインキュベーションオフィス「オギャーズ梅田」主催の起業相談会をオンラインで行った。相談者3名は、高知、東京、京都とバラバラの居住地。印象的だったのが高知の相談者。一通り相談を終えた後、「周りに相談できる人がいないんです」と何気なくつぶやいた。「これだ!」。オンラインは物理的距離を越えてコミュニケーションがとれる。全国各地、世界中の起業家とコミュニケーションをとることが可能だ。
相談者は、何かしらの悩みや聞きたいことがあってやって来る。相談者が求めるのは知識や情報で、リアルな人間関係ではない。それに対応するにはオンラインで十分と判明した。

相談ニーズは高いが、相談相手がいる若者は3分の1

起業支援策のうち、起業相談は最もニーズが高い。(2017年版「中小企業白書」P131)

しかし、「相談相手がいない」と答える人が多く、特に若者に顕著だ。データでは「起業について相談できる相手がいる」と答えた起業予備軍(18~29歳)は32.5%。いざ起業準備を始めても、相談相手がいる若者は3分の1しかいないのだ。(日本政策金融公庫 総合研究所 2015年度「起業と起業意識に関する調査」P9)

また、創業支援機関を利用している人はわずか1~2%というデータもある。
弊社が運営する創業支援施設で受ける3大起業相談は、「ビジネスアイデア」「資金」「手続き」。いずれも支援のプロがソリューションを持つ項目だが、実際は「友人・知人」「家族・親戚」に相談する割合が高く、相談相手と相談内容がマッチしていないのが実情だ。
まとめると、以下のようになる。

●「起業の相談相手がいない」若者が多い
●創業支援機関を利用している人は少ない
●相談相手と相談内容がマッチしていない

必要なのは、専門家に相談できる場と機会

日本の開業率を上げて成功する起業家を増やすには、「起業支援の専門家に気軽に相談できる場所と機会」こそが必要で、場所と機会の提供が最重要となる。オンライン起業相談は、そのためのツールとして有効だ。

五感のうち、視覚、聴覚はオンラインにのる。味覚、触覚、嗅覚は現在の技術では伝わらないが、イノベーションの力で近い将来伝わる日が来るだろう。
では、すべてオンラインで起業支援ができるか?というとそうでもない。
オンラインで起業支援ができる時代の、「リアルの価値」とは?

それは、非効率さこそが価値になるかもしれない。起業支援におけるリアルの価値については、日々向き合う中での感触を別途お伝えします。

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