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職業としての起業支援家
公開日:2022.08.12
今や当たり前だが、コロナ以前はオンラインで起業相談にのることはほぼなかった。Face to Faceに意味があると思っていたが、やってみると結構オンラインでできてしまう。
2020年のとある春の日、大阪にあるインキュベーションオフィス「オギャーズ梅田」主催の起業相談会をオンラインで行った。相談者3名は、高知、東京、京都とバラバラの居住地。印象的だったのが高知の相談者。一通り相談を終えた後、「周りに相談できる人がいないんです」と何気なくつぶやいた。「これだ!」。オンラインは物理的距離を越えてコミュニケーションがとれる。全国各地、世界中の起業家とコミュニケーションをとることが可能だ。
相談者は、何かしらの悩みや聞きたいことがあってやって来る。相談者が求めるのは知識や情報で、リアルな人間関係ではない。それに対応するにはオンラインで十分と判明した。
起業支援策のうち、起業相談は最もニーズが高い。(2017年版「中小企業白書」P131)
しかし、「相談相手がいない」と答える人が多く、特に若者に顕著だ。データでは「起業について相談できる相手がいる」と答えた起業予備軍(18~29歳)は32.5%。いざ起業準備を始めても、相談相手がいる若者は3分の1しかいないのだ。(日本政策金融公庫 総合研究所 2015年度「起業と起業意識に関する調査」P9)
また、創業支援機関を利用している人はわずか1~2%というデータもある。
弊社が運営する創業支援施設で受ける3大起業相談は、「ビジネスアイデア」「資金」「手続き」。いずれも支援のプロがソリューションを持つ項目だが、実際は「友人・知人」「家族・親戚」に相談する割合が高く、相談相手と相談内容がマッチしていないのが実情だ。
まとめると、以下のようになる。
●「起業の相談相手がいない」若者が多い
●創業支援機関を利用している人は少ない
●相談相手と相談内容がマッチしていない
日本の開業率を上げて成功する起業家を増やすには、「起業支援の専門家に気軽に相談できる場所と機会」こそが必要で、場所と機会の提供が最重要となる。オンライン起業相談は、そのためのツールとして有効だ。
五感のうち、視覚、聴覚はオンラインにのる。味覚、触覚、嗅覚は現在の技術では伝わらないが、イノベーションの力で近い将来伝わる日が来るだろう。
では、すべてオンラインで起業支援ができるか?というとそうでもない。
オンラインで起業支援ができる時代の、「リアルの価値」とは?
それは、非効率さこそが価値になるかもしれない。起業支援におけるリアルの価値については、日々向き合う中での感触を別途お伝えします。