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スタートアップトレンドを知る 世界最大級のオープンイノベーションの祭典「ビバテック2024」パリ現地レポ<前編>

「Viva Technology (ビバテクノロジー)」、通称VivaTech(ビバテック)をご存知でしょうか? VivaTechは、フランスの経済紙Les Echosおよび広告代理店Publicis Groupeが主催し、毎年5月から6月にかけてフランス・パリで開催される、オープンイノベーションカンファレンス。世界でも指折りの規模を誇り、2024年で8回目の開催となりました。2024年は5月22日~25日に開催され、多くのスタートアップ、事業会社、投資家が集まりました。
この記事では、スタートアップと大企業が連携したオープンイノベーションに主眼が置かれた2024年の世界最大級のカンファレンスの様子を、現地で取材した内容とともに前編・後編の2回に分けて紹介します。

RouteX Inc.

パリ/東京を拠点に「情報の非対称性が無い世界へ」をミッションに掲げ、スタートアップ・エコシステムに関連する世界中の情報を集約・分析しリサーチ/コンサルティング事業を行うシンクタンク。主に海外進出、新規事業創出、オープンイノベーション創出支援等を行う。 https://routexstartups.com/

世界に類を見ないテックカンファレンス

ここ10年でフランスのスタートアップ・エコシステムは急激に発展し、30社を超えるユニコーンとともにスタートアップ と 大企業間のオープンイノベーションが急速に進みました。これは現大統領であるマクロンが“Startup Nation”を掲げ、包括的なスタートアップ支援策を継続的に行ったことによりますが、まさに”Startup Nation”を初めて口外したのが2017年のVivaTechでした。このようにVivaTechは、フランスのスタートアップの発展を象徴する存在として注目を集めています。

<参考>https://www.youtube.com/watch?v=Cj3pB97j1sE

 

2024年のVivaTechは、165,000人以上 (昨年比10%増)の参加者、13,500社 (昨年比20%増)のスタートアップが出展し、過去最大規模を記録しました。同規模で開催されるテックカンファレンスは、世界でも類を見ないものとなっています。

2024年は日本が特別招待国

VivaTechの大きな特徴の一つが「Country of the Year(特別招待国)」と呼ばれる取り組みです。これは、VivaTechの場で一国を取り上げ、フランスと対象国とのイノベーションにおける連携を発信するものです。

       

2024年はCountry of the Yearとして日本が選出され、世界中から集まったプレイヤーに対して、日本のスタートアップ、そのソリューションが大きく発信されました。

1日目はオープニングセレモニー直後の「Bullet Train to the Future」というセッションにて、岸田 文雄首相が録画でメッセージを送るとともに、経済産業副大臣の岩田 和親氏、東京都副知事の宮坂 学氏が現地で登壇。日本および東京都のスタートアップエコシステムの特徴・優位性や、VivaTechの前週に東京で実施された東京都主催のグローバルテックカンファレンス「SusHi Tech Tokyo 2024」の盛り上がりが紹介されました。

今回のCountry of the Yearに合わせて、日本貿易振興機構 (JETRO)が会場内に「Japanパビリオン」を出展し、事前に選定された60社のスタートアップがブースを設置しました。これは昨年のCountry of the Yearであった韓国が招待したスタートアップ数30社の倍にあたり、会場内の立地も相まって連日多くの参加者がブースを訪れていました。

 

スタートアップのほかにも、MUFGや三菱重工などの大企業もブースを設置し、日本国内外の連携スタートアップを紹介することで、オープンイノベーション事例を対外発信しました。

 

参加スタートアップからは、海外企業の重役が直接視察に訪れたという声も聞かれ、スタートアップにとっては、自社事業の海外展開を目指す上で有意義な機会としてVivaTechは機能したことが伺えます。

日本のスタートアップが一大コンテンツに

Country of the Yearのくくりとは別に、フランス企業による日本のスタートアップやエコシステムへの寄与も多く見られました。

ルイ・ヴィトンなどのメゾンを傘下に持つラグジュアリー大手のLVMHは、「Innovation Award」というスタートアップ・コンペティションを毎年のVivaTechで実施しています。

今回、同アワードの「Employee Experience, Diversity & Inclusion」というコンペ内の部門で、福祉施設のアーティストによる新たな文化の創造を目指す岩手県発のアートライフスタイルブランド「ヘラルボニー」社が世界1,545社から日本のスタートアップで初めて受賞したことが話題となりました。社会的弱者の社会参画への意識が高いヨーロッパにおいて、この受賞は日本企業の海外展開の道筋を示すものとなったのではないでしょうか。

 

また、ジカンテクノ社も、LVMH Innovation Awardの18のファイナリストの一社に選出されました。ジカンテクノは農業残渣であるもみ殻や麦殻を、高純度で適正価格のシリカやカーボンといった高付加価値製品に変換する画期的な技術を開発しています。その他、LVMHは日本でのオープンイノベーションの取り組みをJETRO Startupの樽谷 範哉氏とともに紹介するなど、自社ブース内でのサイドイベントでも積極的に日本とのつながりを紹介していました。

 

また、航空機大手のAirbusは、R&Dや新規事業開発のハブである“Tech Hub”を東京に設置することをVivaTechの2日目の5月23日に発表しました。この新しい拠点は、日本国内でのパートナーシップを強化し、航空宇宙分野の研究と技術革新を推進することを目的としています。Airbus Tech Hubは新材料の開発、脱炭素技術、ロボティクスとオートメーションの3つの主要研究分野に焦点を当て、シンガポールやオランダに続くグローバルネットワークの一部として、日本の技術を活用して次世代の航空機開発を進めます。この発表は日本政府とフランス政府の支援を受け、在フランス日本大使館やフランス民間航空総局(DGAC)、JETROの代表者が出席する中で行われました。

 

VivaTechは、企業が経営上重要な発表を会期中に行うことがよくありますが、今回は特に日本に関係の深いトピックを取り上げることで、日本との連携を強化する姿勢が印象的に映りました。

 

後編では、注目されたテーマやスタートアップ企業から、欧州スタートアップ界隈のトレンドを紹介します。

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