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起業家教育
公開日:2025.05.29
地方では若者の流出や人口減少が深刻な課題となっています。特に、大学卒業後の就職をきっかけに地元を離れるケースが多く、結果として地域経済の縮小につながっています。そのため、「どうすれば若者が地域に戻ってくるのか?」という視点が重要になっています。
本記事では、2つのレポートを分析し、この問題の背景を探るとともに、起業家教育が地域回帰を促す可能性について考察します。
※本記事は、小中学生向け起業家教育プログラムを提供するミライクルラボ社の公式noteより一部転載しています。
若者の6割が地元就職を希望
マイナビの調査によると、 2025年卒業予定の大学生・大学院生のうち62.3%が地元就職を希望 しています。これは3年連続でほぼ同水準を維持しており、過去5年間を見ても50%を下回ったことがないというデータが示すように、多くの若者が「地元に住み続けたい」と考えていることが分かります。
実際の就職先は地域外が多い
一方で、リクルートの就職みらい研究所による「大学生の地域間移動に関するレポート2024」を見ると、就職先は必ずしも地元にとどまっていません。
例えば、首都圏では地元就職率が高い一方、近畿や四国では地域外就職率が高いことが報告されています。
これは、地域ごとに雇用機会や産業構造に差があり、結果として 「地元に愛着はあるが、就職の選択肢がないために離れる」という傾向が見えてきます。
この2つのデータを読み解くと、「若者は地元に残りたいと思っているが、現実的には地元以外での就職が多い」という傾向が明らかになりました。
上記のデータから、「地元に住みたい」と思っていても、実際には地元以外での就職を選択する理由として、以下の2つの課題が浮かび上がります。
① 魅力的な雇用機会の少なさ
• 地元で就職したくても、企業数自体が少なく、選択肢が限られている。
• 安定した職業として「公務員」が第一候補になるほど、地方の民間企業の雇用環境が整っていない。
• ベンチャー企業や新規事業の数も少なく、成長の機会が限られる。
② 給与面でのギャップ
• 都市部と地方では給与水準に大きな差がある
• 東京都の平均初任給:220,500円
• 福岡県の平均初任給:203,700円
• 青森県の平均初任給:190,200円
• 沖縄県の平均初任給:175,000円
このように、地方の給与水準は東京都と比較して 最大で約20%低いことがわかります。
③地方での昇給やキャリアアップの機会が少ない
企業の規模や成長性に違いがあり、都市部の企業ではキャリアアップの機会が多い一方、地方では給与水準の上昇が限定的。このため、長期的な収入面を考慮し、都市部での就職を選択する傾向が強くなる。
ここで重要になるのが、「地元に帰る選択肢をどう作るか」という視点です。
ミライクルラボでは、起業家教育を通じて 「地域で働く新しい方法を創出する」ことが、地域回帰のカギになると考えています。
① 起業・創業による雇用機会の創出
• 「雇用がないなら、自ら仕事を作る」という視点を持つことが重要。
• 起業することで 地元に戻る理由を生み出せる。
• 企業で働くのではなく 地元企業の中で新しいビジネスを生み出す「イントレプレナー(社内起業家)」 という選択肢も可能。
② 地元愛の育成
• 起業家教育の一環として「なぜ自分がやるのか?」を考える機会を提供。
• 地元の特産品や文化を活かした事業アイデアを考えるプロセスを通じて、地域への愛着が深まる。
• これにより、将来の選択肢として「地元で何かをしたい」という意識が強化される。
データから、地方の若者は「地元に残りたい」と考えながらも、雇用機会や給与の問題によって、結果的に都市部に流出してしまうことが分かりました。
これを解決するには、「地域での働き方を変える」「地元愛を育む」という2つのアプローチが必要です。
起業家教育は、起業家精神を養うだけでなく、若者が「地元に帰る選択肢」になり得るのです。